ノースエリア格闘技イベント BOUT-16
2014年3月16日(日)テイセンホール
▼第二試合 BOUT公式戦43kg契約2分3R
・キューティ♡危機一髪!!(grabs)
・柴田ひとみ(札幌道場)
勝者:キューティ 判定3-0
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キューティー、雪辱なるか?
キューティー♡危機一髪!!(以下、キューティー)の戦いぶりに敬意を表したい。テクニックや試合運びといったことではなく、純粋に格闘者としての勝ちにいく姿勢に対してである。
「1Rのゴングが鳴って最初の一撃はお前が繰り出すんだ。そうすれば”キレる”ことができる」セコンドからの指示通り、1Rのゴングが鳴るや否や、左ミドルで先制したキューティー。この瞬間から彼女の理性という思考回路はどこかへ消えてなくなったのだそうだ。
「試合中のことは全く憶えていません」その言葉通り、最終のゴングが鳴るまで無我夢中で攻め続けた。対戦相手の柴田にはアマチュア時代、二度敗れている。いずれの試合もリーチに勝る柴田の前手に前進を阻まれ、懐に入ることができなかった。
師・黒ひげからの秘策
今回の一戦でもタイ人ばりに前手を突き出し、キューティーの前進を阻もうとする柴田。しかし、その体勢をキープするには前足を地面に着けていなければならない。キューティーはその前足を狙う作戦に出た。他にも選択肢はあったが、師・黒ひげ危機一髪!!とともに熟慮した末の納得の戦略だ。
作戦は見事に的中。「多少、蹴らせておいても下がらせてしまえばこっちのもの」と言わんばかりに余裕をみせていた柴田だったが、キューティーは下がらない。それどころか、尋常ではないローキックの本数に、柴田の脚はみるみる変色していった。
2R以降、柴田は要の前足をヒザブロックに使わざるを得なくなったため、前手を突き出すことができず、キューティーの進入を許してしまった。ローキックで意識を下に向けさせたキューティーは、返しの左フックも立て続けにヒット。とにかく、攻めに攻めた一戦だったといえよう。
鬼気迫るキューティーの猛攻
1Rから3Rまで変わらぬ手数の多さ。繰り出したローキックの数は100本以上。試合は2分3Rであるから、じつに3秒に1発は繰り出している計算だ。
ローキックの他にも左フック・右ストレートを多用していたことを考えると、始めから終わりまで休みなく動いていたといって差し支えないだろう。筆者などは、脛と脛がカチあったときの生々しい音をリング下で聞き、鳥肌がたってしまったが、なおも蹴り続けるキューティーの姿には鬼気迫るものがあった。
キューティーの戦いぶりを見ていて思い出したことがある。いつだったか、雑誌「SAPIO」に掲載されていた落合信彦氏のコラムを読んだときのことだ。コラムのテーマは活躍する女性を報道するメディアに潜む女性軽視について。
落合氏はそのコラムにおいて、当時、STAP細胞の作成で一躍脚光を浴びていた小保方晴子氏が「女性」であることをことさら強調した報道や、ソチ五輪で活躍したカーリング女子日本代表チームのメンバーの一部が既婚者であったことから、「カーママ」の愛称で呼んだことに対して痛烈に批判している。
格闘者としての彼女を評価
選手が女性であり、既婚や母親であることと、競技の実力とが何か関係があるのだろうか?
要するに「女性なのにすごい」「ママなのに頑張った」という報道の根底にあるものは、「若い女性や既婚女性は普通、たいした成績を残すものではない」という価値観であり、彼女たちに対するリスペクトに著しく欠けているといった内容だった。
プロ昇格後、道内初の女性プロキックボクサーとして、数々のメディアの取材を受けてきたキューティーではあるが、その報道の大部分が「女性であること」「ママであること」にフォーカスしていたことは否めない。筆者を含めて、このような報道に終始したメディアは大いに恥じるべきだろう。
この日、彼女は純粋に格闘者だった。男女の区別なく、女性だったから偉いのでもなく、ママだったから偉いのでもない。ただただ、格闘者としての本分を全うしたという点において彼女を評価したい。
写真提供:BOUT実行委員会
photo & text:山田タカユキ
山田 タカユキ
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