BOUT-16:永山敬之が名古屋のスピードスターを迎撃

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ノースエリア格闘技イベント BOUT16
2014年3月16日(日)札幌市・テイセンホール

 16回目を迎えた北海道最大の格闘技イベント「BOUT」が吹雪舞う札幌の夜を熱くした。
メインでは元祖・道産子ファイター、永山敬之がBOUTのリングに降臨。名古屋のスピードスター、石橋真幸を迎え撃った。その他、KO決着必至の好カードが目白押しだった今大会をダイジェストで振り返る。

メインイベント:RISE公式戦フェザー級3分3ラウンド延長1ラウンド
×永山 敬之(RISEフェザー級8位・士道館札幌道場)
○石橋 真幸(RISEフェザー級4位・名古屋JKF)
判定3-0

佐藤孝也、鈴木秀明、佐藤嘉洋等の超一流選手を輩出している名古屋JKファクトリー所属の強豪・石橋真幸がBOUT来襲。迎え撃つのは一年ぶりの札幌登場となる、BOUTの申し子・永山敬之だ。

1R、”名古屋のスピードスター”の異名を持つ石橋のスピードは際立っており、その稲妻のようなジャブは目にも留まらぬ速さだ。「あのジャブは前回も見えなかったけど、今回も見えませんでしたね」と語った永山は何度も前進を阻まれてしまう。1Rは石橋の好きにさせてしまったラウンドだといえるだろう。

永山の目が石橋のスピードに慣れてきたのは2R。石橋が右ローキックを蹴ったその蹴り足に、左のアウトローキックをあわせるという高等テクニックを披露すると、右のクロス、左のボディブローも立て続けにヒットしてみせた。

その後も永山は観客の大声援をうけて大接戦を演じる。ポイントも大分盛り返した印象をうけたが、2R終了時点での陣営の判断は「1ポイント負けている」といったものだった。延長戦に持ち込むには続く3Rをなんとしても取らなければならない。

迎えた3R。石橋も普段は故郷の名古屋を主戦場としているだけにアウェーでの判定には不安が残る。あからさまに逃げ切りの姿勢を見せれば延長戦にずれ込む可能性も考えられるだけに、きっちりと差をつけて終了のゴングを聞きたいところだ。

最高潮に達した声援のなか、3分間まったく手を休めずに打ち合った両者。わずからがら石橋の前進が光り、判定は3-0で石橋に凱歌があがった。

判定直後、土下座をして観客に詫びる永山だったが、なにを責められるだろう。なぜならこの試合の翌月、某団体のチャンピオンとの対戦オファーというビックチャンスを断ったほど永山自身も燃え尽きた試合だったからだ。

次戦は自身初となる大阪遠征を予定。彼ならば必ずや”北海道に永山あり”と存在感を示してくれるはずだ。

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セミファイナル:RISE公式戦スーパーフェザー級3分3ラウンド延長1ラウンド
○石澤 大介(RISEスーパーフェザー級7位・パラエストラ札幌)
×須郷 章生(蹴空ジム)
判定3-0 ※不可抗力のバッテイングにより2Rにて終了

道内版キック代表 vs MMA代表の威信を賭けた一騎打ち。戦前から「裏メイン」として注目を浴びた一戦だ。

1R、須郷はサウスポーからのミドル、アウトロー。ミドルを喰らった石澤は大きく体勢を崩す。石澤はパンチとローで応戦、圧力は石澤が若干上といったところ。

須郷はパンチに合わせてカウンターの膝。石澤は下がらない。徐々に下がりはじめる須郷。中盤に石澤の右のフックでダウン奪取。須郷は苦笑い。再開後、石澤はハイキックを数回にわたり繰り出す。須郷は動揺した気配はなく、淡々と立て直す。

2R、打ち合いに誘い込みたい石澤だが、須郷は付き合わない。ヒットアンドアウェイでポイントを稼ぐ須郷。パンチの距離から石澤の豪快なハイキック。空振りでも場内がおおいに沸く。中盤、須郷は前進の比率を増やす。

このとき偶然のバッティングで石澤の額に裂傷、試合が中断。長いドクターチェックの末、試合はストップ。終了時までの採点による判定で、石澤の勝利となった。

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RISE公式戦75キロ契約3分3ラウンド
×克(フリー※札幌出身)
○森 孝太郎(リアルディール)
KO2R2分30秒

克は以前、K&Kボクシングクラブに所属していたハードパンチャー。対する森は九州キック界の雄、リアルディールが送り込んできた若手成長株。

試合の流れは、1Rから森が好き放題。サウスポーからの左ストレート、右フック、左ヒザを軸に、繰り出した攻撃の80%はクリーンヒット。

克は膝の負傷もあってか調子はイマイチだが、それを差し引いても、これはもらいすぎだ。終盤には何度もグラつく場面も。ダウンしないのが不思議といった、克のゾンビ的な一面を強調したラウンドだった。

2R、森は左のアウトローをあらたに投入。克は森の左ヒザに合わせて、カウンターの右ストレートで反撃。何度かいいタイミングで森のアゴを捉えるが、これで森の表情が一変。まずは左ストレートで一度目のダウンを奪うと、再開後もパンチをまとめて早々と試合を終わらせてしまった。

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RISE公式戦ライト級3分3ラウンド
○AKINORI(蹴空ジム)
×清水“TOKAREV”靖弘(TARGET)
判定3-0

BOUTにおいて存在感を増してきたAKINORI。今回の相手、清水”TOKAREV”靖弘は名門ジム”ターゲット”所属の突貫ファイターだ。この難敵を、AKINORIは左ボディから右ローキックの対角線コンビネーションを軸に迎え撃った。

1RからAKINORI得意のローキックが面白いようにヒット。相当数のローキックを被弾した清水は、2RにはAKINORIの蹴り脚を掴まずにはいられない有り様だ。おそらく、2Rの時点でAKINORIの勝利を確信した関係者も多かったのではないか。

3Rに入ると、AKINORIがどういった方法でトドメを刺すのかという一点に注目が集まるほどのワンサイドな展開。しかし、ここからの清水の踏ん張りが凄かった。ローキックの痛みに顔を歪めながらも、絶対に後退せず、一発逆転の想いをを込めてパンチをふるい続けた。「あれは倒せなくても仕方ないですね。清水選手の頑張りが凄かったですよ」と大会統括の小堀祐氏も舌をまいた。

試合後、連続KO勝利を逃したAKINORIは納得のいかない表情を見せたが、これも高い理想があればこそだ。好感がもてると言えるだろう。

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RISE公式戦68キロ契約3分3ラウンド
×竹内 幸司(HLC)
○CAZ JANIJIRA(ジャンジラジム)
KO2R2分07秒

今回はじめて打撃戦に挑んだ旭川のMMAファイター竹内幸司が2R、CAZのハイキックの前に壮絶に散った。先に行われたBOUT-15函館大会において見せた非凡な打撃センスを評価されての一戦であったが、今回の対戦相手・CAZ JANJIRAは少々高い壁であった。

試合は開始早々に竹内がパンチで攻め込む。サウスポーのCAZに対し、セオリー通りに右ストレートを放つが、これがタイミングよくヒット。しかし、この一撃がCAZの警戒心を煽り、必要以上に左ミドルを被弾する原因でもあった。
CAZの長い手足から繰り出される左ミドルは破壊力抜群。”バチーン!!”という芯をとらえた快音が何度も会場に響き渡った。

2R、仕切り直しをしようと焦る竹内はロープ際で足を滑らせバランスを崩してしまう。並みの選手であれば竹内が体勢を立て直すのを見守ってしまうきわどい瞬間であったが、そこをすかさず攻め込んだCAZの集中力は見事だった。

この非情な攻め込みにさらにバランスを崩す竹内は、CAZ必殺の左ハイキックをアゴに被弾。スタンディングダウンを奪われてしまう。

再開後、同じくパンチからのハイキックで試合を決めたCAZ。レフェリーがカウントの必要なしと判断する完全なノックアウト勝利だった。

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RISE公式戦バンタム級3分3ラウンド
×中澤 弘志(スクランブル渋谷※札幌出身)
○山川 賢誠(士道館札幌道場)
判定2-0

”草食の倒し屋”山川賢誠が、その草食の仮面をかなぐり捨てて気迫の殴り合いを演じた。これまで得意のカウンターで比較的早いラウンドで試合を終わらせてきた山川であるが、この日は同じく札幌出身である中澤の予想外の踏み込みの速さに、得意のカウンターが不発に終わっていた。

最終ラウンドにより良い印象を残したほうが勝者となる、山川にとっては未経験のシチュエーション。顔面を紅潮させて打ち合う中澤に対し、顔色を変えず淡々と打ち合う”草食キャラ”の山川はジャッジに与える印象が薄い。頭から流血でもさせながら打ち合って、初めて他の選手と同じくらいのラッシュ感がでるというのは、なんとも損なキャラクターである。

なんとか手数の多さで判定勝利をものにしたが、当たっては跳ね返される基礎体力の弱さも露呈した山川。さらに中澤はメジャー団体「レベルス」のれっきとしたランカーであるはずなのに、判定勝ちをしたくらいでは褒められもしないというのも期待の新星の辛いところ。今後に課題が残る一戦となった。

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RISE公式戦スーパーフェザー級3分3ラウンド
△工藤 公邦(蹴空ジム)
△ACHI(TARGET)
引き分け0-0

アマチュア時代、徹底して潰しにかかるファイトスタイルで対戦相手を震え上がらせた工藤。しかしプロ転向後、スランプに陥っている。

今回も使用する技がコロコロと変わり、そのプランにおいて一貫性がみられない。どこかに迷いがあるような歯切れの悪さだ。終盤になるとバックブローやバックキック等の奇襲技にはしるのも工藤の悪いクセ。これは自ら「ネタが尽きました」と白状しているようなもので、ジャッジに対する印象が悪い。

相手のACHIがガンガン倒しに行くタイプであれば盛り上がったかもしれないが、両者ともにそういった姿勢はなく、試合全体が弛んだままドロー判定となった。工藤の迷いの原因がどこにあるのかは定かではないが、外野がとやかく言っても始まらない。”KOマシン”工藤公邦が一日も早く帰ってきてくれることを願うのみだ。

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RISE公式戦ミドル級3分3ラウンド
×夜獅鬼(パラエストラ札幌)
○長谷川 豊(KFG URAWA※札幌出身)
KO3R1分56秒

昨年9月のBOUT-ZEROにおいて鮮烈なデビューを果たした夜獅鬼。今回も野性味あふれるファイトを期待された夜獅鬼だったが、序盤から長谷川のトリッキーなスタイルに苦しんだ。

長谷川は調子に乗せると恐いタイプ。右ストレートと右ミドルがヒットすると見るや、飛び膝蹴りにジャンピング・ハイキック等々やりたい放題だ。

後退を余儀なくされた夜獅鬼は自身の持ち味を発揮できないどころか、1R終了時にはロープにもたれかかるようにして自軍に引き返す有り様だ。

2Rにはボディのダメージを隠しきれない夜獅鬼に、レフェリーはスタンディングダウンを宣告。長谷川もここらが勝機と見たのだろう、3R早々に右ミドルをヒットさせ試合を決めてしまった。

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BOUT公式戦43キロ契約2分3ラウンド
○キューティ危機一髪!!(GRABS)
×柴田ひとみ(士道館札幌道場)
判定3-0

道内初の女性プロキックボクサー、キューティ危機一髪!!のプロデビュー戦。

対戦相手の柴田にはアマチュア時代、二度敗れている。いずれの試合もリーチに勝る柴田の前手に前進を阻まれ、懐に入ることができなかった。今回の一戦でもタイ人ばりに前手を突き出し、キューティーの前進を阻もうとする柴田。

しかし、その体勢をキープするには前足を地面に着けていなければならない。キューティーはその前足を狙う作戦に出た。他にも選択肢はあったが、師・黒ひげ危機一髪!!とともに熟慮した末の納得の戦略だ。

作戦は見事に的中。「多少、蹴らせておいても下がらせてしまえばこっちのもの」と言わんばかりに余裕をみせていた柴田だったが、キューティーは下がらない。それどころか、尋常ではないローキックの本数に、柴田の脚はみるみる変色していった。

2R以降、柴田は要の前足をヒザブロックに使わざるを得なくなったため、前手を突き出すことができず、キューティーの進入を許してしまった。ローキックで意識を下に向けさせたキューティーは、返しの左フックも立て続けにヒット。

とにかく、攻めに攻めた一戦だったといえよう。1Rから3Rまで変わらぬ手数の多さ。繰り出したローキックの数は100本以上。試合は2分3Rであるから、じつに3秒に1発は繰り出している計算だ。

ローキックの他にも左フック・右ストレートを多用していたことを考えると、始めから終わりまで休みなく動いていたといって差し支えないだろう。「気迫の勝利」そんな言葉が似合う激戦だった。

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その他の試合は以下の通り。

RISEセレクションマッチライト級2分3ラウンド
○山口 翔平(GRABS)
×冨田 正美(忠和會)
判定3-0

写真提供:BOUT実行委員会
photo & text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。