ドリーム・カム・トゥルー! AKINORIの時代到来の予感。 | 蹴空ジム・AKINORIさん

インタビュー第25回は5月25日のBOUT-ZEROでメインイベンターを務める、蹴空ジムのAKINORIさん。連勝街道を突っ走るBOUTの貴公子が初メインに向けての抱負を語ります。

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結局は個人の問題。自分との戦いだと思う

――BOUT-16での勝利、おめでとうございます。試合前の調整はうまくいっていたんですか?

そうですね。今回は減量もうまくいったし、怪我もなかったですからね。最近では一番いいコンディションで試合に臨めたと思います。

――東京の名門ジム所属の選手との試合でしたが、プレッシャーはありましたか?

最初の頃は相手が有名なジムの選手だったりすると、「相手が自分でいいのかな」って思うこともありました。
でも最近、ジムの名前は関係ないなって思うんですよ。これまで戦ってきて、強いか弱いかは選手個人の問題だなっていうのが正直なところです。

――対戦相手の情報は事前に集めるタイプですか?

いえ、あまり。だいたいこんなスタイルの選手だっていうのがわかれば、他の事は詳しく知ろうとは思わないですね。
基本的に自分との戦いだと思ってるんで、自分のスタイルを出せれば勝てるというくらいの練習をすることが大切だと思います。

――対戦相手のトカレフ選手ですが、どういった印象を持ちましたか?

気持ちが強かったですね。”絶対に勝つ”っていう気迫がもの凄く伝わってきたっていうか。
パンチがきつかったので、僕も”絶対に倒れるものか”って思いながら戦ってました。最後は「倒そう、倒そう」という気持ちが出すぎちゃって、逆に倒すことが出来ませんでしたが。

――ローキックは大分効いてましたよね。

効いてましたね。次はうまくフィニッシュできるように頑張りますよ。

――ボディからローの連携が冴えてましたけれども、あれは重点的に練習したパターンなんですか?

はい。今までの試合をローキックで決めてるじゃないですか。そういった情報が向こうにも伝わっているかなと思ったんで、ボディと左ミドルを織り交ぜていこうかなと。余裕があれば奥脚へのローキックも狙っていきたかった。

――実は、どういった検索フレーズでMMA禅のサイトに辿りついたかを調べることができるんです。それで見てみると、”AKINORI”の検索フレーズで検索してる人が相当数いるんですよ。全部、東京と大阪からのアクセスです

それって、いままで戦ってきた人達ですよね、絶対(笑)。
やっぱり、検索すると試合結果なんていくらでもでてきますからね。”ローキックでKO勝ち”とか書いてあると、「こいつはローキックの選手なんだな」ってすぐに分かっちゃいますから。
僕もそのあたりは「どうやったら相手の予想外になるのか」ってことを常に考えてます。今回の試合もサウスポーに構えてみたり、普段は狙わない奥脚を狙ってみたりしてみたんで。結果的に前足が効いてたみたいなんで、オーソドックスからの右ローに戻しましたけどね。

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常に意外性をもっていたい

――ローキックで攻めるスタイルは誰の影響ですか?

K-1の魔裟斗選手が好きで、彼の試合をよく見ていたんです。ローキックの印象が強く頭に残っているので、その影響だと思います。

――試合毎に技のバリエーションが増えている印象があります。

攻撃の幅を広げるっていうのは自分でも意識していますし、毎試合テーマをもってやっています。これから上の選手とやっていくには倒せるパターンを確立していかないといけないですよね。

――普段、キックボクシングの試合映像を見て研究するといったことはありますか?

試合の映像はよく見ますね。「こんな攻め方があるんだ」「この技おもしろいな」っていうのがあれば、すぐに練習で試してみます。逆に試合前は「自分もこんな試合がしてみたいな」って感銘をうけた試合の映像を見てテンションを上げたりとか。
最近では山本優弥選手の試合が気持ちのこもった良い試合でしたので、何度も拝見しています。僕も試合の後半になったら、声を張り上げて気持ちを前面に出していこうかな(笑)。

――試してみるといえば、今回の試合では”ヴァレリーキック”も繰り出していましたが、あの技をキックの試合で拝見するとは思いませんでした。空手家の試合も見て研究されているわけですか?

いえ。あの蹴りは全くのオリジナルの発想で繰り出したものです。有名な空手家が代名詞としている蹴りだとは全く知りませんでした。
プロである以上、常にお客さんを驚かせる意外性を持っていたいと思うんですよ。そう考えていくと、あんな蹴り方があっても面白いんじゃないかなって、前から思ってたんです。いつも同じ技・同じスタイルじゃ、観ているお客さんも面白くないでしょう。

――”お客さんがどう感じるか”っていう視点は大事ですね。

その点では、ムエタイのセンチャイ・ソー・キングスター選手の影響も受けてるんです。技の玉手箱っていうか、いろんな技でお客さんを楽しませてるじゃないですか。僕も「AKINORIなら、なにかやらかしてくれるんじゃないか」「次の試合も観てみたい」っていうワクワク感をもって観戦してもらえるような、そういう選手を目指したいですね。

――オリジナルで出す技について、伊藤トレーナーからの意見はあるのですか?

基本的には放任主義ですね(笑)。あまり押し付けがましいことは仰らない方なんで。多くを語らないっていうか・・・。
だから逆に一言の重みっていうのがあるんですよ。伊藤さんが「今の攻撃よかったよ」とか「こうしたほうがいいんじゃないか」って言ってくれるときは、本当に大切なポイントなんだなって思いますね。

――減量がうまくいったとのことですが、普段の食生活はどんな感じなんです?

試合前は低カロリー高たんぱくを心掛けています。それから野菜は意識して多めに摂るようにしてますね、ひたすら野菜を食べてますよ。
もともと学生時代にパスタ屋さんで調理のアルバイトをしてましたし、自衛隊に在籍していたときも調理部門で勤務してたことがあるんですよ。
普段から料理本を読んだり、ネットでレシピを調べたりしてるんで、基本的に調理は嫌いじゃないんです。

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自衛隊からキックボクシングの世界へ

――格闘技との出会いについてお聞かせください。

自衛隊時代に習ったのが始まりです。自衛隊には日本拳法をベースとした格闘術がありますので、その授業を受けていました。
ただ練習日が少なかったので、物足りない部分は自主トレですよね。録画しておいたボクシング等の試合映像を見て研究したあと、体育館に吊るしてあるサンドバックを一人で黙々と叩いていました。
そんなことを続けているうちに、興味がどんどん強くなっていって「本格的にやってみたい」と思うようになったんです。キックに転向したのは20歳過ぎてからですよ。

――日本拳法といえば縦拳や前蹴りですが、AKINORI選手のスタイルには反映されてませんね。

最初の頃は出していたんですが、キックボクシングになると通用する部分としない部分がありますから、トレーナーと相談しながら修正したんですよ。あと、自衛隊時代の練習はいわゆる”寸止め”が多かったんですが、キックに転向してからは「もっとガツン!といけ」みたいなことをよく言われたのを憶えています。

――ほう。自衛隊といえば、もっとガチでやってるイメージがありましたが違うんですね。

全然っすよ。僕も思いっきり蹴りたかったんですけど、我慢してましたから(笑)。
でも誤解のないように言っておくと、自衛隊の格闘術を学んで良かったと思ってるんですよ。格闘技やる前にやってた野球にしてもそうなんですけど、それぞれの選択にそれぞれの良さがあって、「やらなければよかった」ってものは一つもない。逆にガキの頃からキックボクシングだけをやっていたら、今頃はもう辞めているかもしれませんね。

――所属ジムに蹴空ジムを選んだのは理由があったのですか?

いえ、特にないですね。ネットで検索したら一番上に出てきたんで、そのまま見学に行って入門しちゃった感じです(笑)。

――本日は新しくオープンしたジムにお邪魔しましたが、皆さん気合はいってましたね。

そうですね。人数が集まったときは、ペアになってミットやスパーリングを中心にやってます。その後、各自で自主トレって感じですね。

――練習で最も重視するパートは?

時期によって違ってきますけど、試合前であればスパーリングですね。一週間前までは6~7R、多いときで10Rくらいやって流れを作っていく感じです。
普段の練習では体力をつけることに重点を置いているので、とにかく息の上がるメニューを意識してやっています。ミットにしてもサンドバックにしても心拍数重視ですね。

――練習を拝見しますと、随分とボディを鍛えるパートが多かったような気がします。

去年9月のBOUT-ZEROで、ボディを攻められてヤバかった場面があったんですよ。それまではボディには自信があったんですけど、全然弱いじゃんって(笑)。
それ以来、ボディは重点的にやってますね。やっぱり、ボディで倒されるのはカッコ悪いですから。

――蹴空ジム以外のジムに出稽古に行ったりはするんですか?

いえ。出稽古というのは一度も行ったことがないんですよ。僕自身、人見知りするっていう部分もあるし、そのジムそのジムで独特の空気ってあるじゃないですか。あのアウェーの空気っていうのがどうも苦手でして(笑)。

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メインイベンターへの想い

――将来的に目指している目標があれば教えてください。

キックボクシングのチャンピオンになること。まずはお世話になっているメジャー団体「RISE」さんのベルトを狙いたいです。

――ところで胸に彫ってある刺青はなんて書いてあるんです?

「DREAM COME TRUE」って書いてあります。キックボクシングでチャンピオンになるために自衛隊を辞めてきたわけですが、そのときの気持ちを忘れないためにも胸に刻んでおこうと思ったんです。
いまでも練習で壁にぶち当たると、この文字をみてあの頃の気持ちを思い出すんです。「夢は必ず叶う」ってね。

――5月25日に行われるイベント「BOUT-ZERO」ではメインを務めることになりました。

メインイベンターっていうのは、あまり意識しないようにしてるんです。もちろん、イベントを締めくくる試合という意味での重要性や、純粋にお客さんに楽しんでもらうためのイベントだっていうことは大前提としてあります。
それよりもRISEのルーキーズカップの一回戦という位置づけなんで、そこの部分を意識していきたいですね。なにがなんでも勝つっていう気持ちを持って今はやってます。

――BOUT-ZEROというイベントは北海道vs本州という意味合いが強いイベントですが、そういった部分は意識されますか?

そうですね。北海道の格闘技ってまだまだ盛り上がれるっていうか、伸びしろがたくさんあると思うんですよ。こういった対抗戦をきっかけにもっと会場に足を運んでもらえるようになればいいですね。一般の方からするとキックボクシングってただ殴って蹴ってっていうイメージだけかもしれないけど、実際に会場で見てみると未知の驚きや感動があるじゃないですか。
僕の場合も、応援に来てくれた友人・知人から「感動したよ」とか「いい刺激をもらった」とか言ってもらうと、やっててよかったなって思うんです。キックボクシングを通じて、そういったポジティブな何かを感じてもらえるというのは素晴らしい事だと思います。

――イベント終了後、ファンからの写真撮影のリクエストも多くなってきました。

全く知らないファンの方からそう言っていただくのは本当にありがたい事です。写真撮影はもちろんですけど、会場に足を運んでくれたってことが嬉しいんですよね。僕の応援に限らず、格闘技全体のライヴ感を肌で感じてもらうことが大切なんです。

――5月25日はAKINORI応援団で客席が埋まりそうですね。主催者側も大助かりでしょう。

アマチュア時代からお世話になっている故郷・滝川市の先輩には、いつも一番にチケットを送らせて頂くんですよ。その他、大勢の友人・知人に「都合がつけば是非」ということでチケットを送らせて頂きました。
皆さんの声援があると、「一人きりで戦ってるわけじゃない」って思えるんです。今回も勝ちにいきます。ご声援よろしくお願いします!

――それでは5月25日、「BOUT-ZERO」での健闘を祈ります。本日はありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

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【AKINORI プロフィール】本名、倉晃範。1990年1月27日、滝川市出身。自衛隊時代に徒手格闘術を学び、その後キックボクシングの世界へ。アマチュア時代より好戦的なファイトスタイルと、端整なルックスで注目を集める。プロ転向後は5戦して全勝、うち4KOと波に乗る道内キック界のホープ。5月25日開催の「BOUT-ZERO」では自身初のメインイベンターとしてリングにあがる。趣味はスポーツ全般、アクセサリー制作等。大の和菓子好きでもある。

ジム・道場データ

Photo & Text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。