キック六冠王が大いに語る。新春特別インタビュー! | grabs・TOMONORIさん

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インタビュー第11回は、札幌市出身のキックボクシング世界チャンピオン、TOMONORI さんにインタビュー。昨年春に自身のジム「grabs」を札幌市東区にオープン。北海道キックボクシング界発展にかける思いを語ります。新春特別インタビュー。

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世界チャンプの指導が札幌で実現

grabsをオープンされて半年が経過しましたがご苦労されている部分はありますか?

やはり経理というかお金の出し入れですね。他には東京と違って札幌には格闘技ショップが少ないじゃないですか。東京だと各自でショップへ行ってマイグローブを揃えますが、札幌はジムで販売しているグッズを購入する場合が多いんです。こちらとしてもどういった商品を揃えておけば喜んでくれるのかを日々模索しなければいけませんよね。

札幌でジムをオープンする構想はいつ頃からお持ちだったんですか?

19歳で上京した当時から、札幌に帰ってきたらジムをオープンするっていうのは頭の中にありました。そのときからイメージができていたので、新規オープンしたてといってもこれが当たり前っていうか普通なんですよね。

当初はプロ選手の育成は考えていなかったという話も聞きますが?

今もあえて作ろうとは思っていません。今は一般会員さんにキックボクシングの楽しさを知ってもらって、本当に満足して帰ってもらうことに力を入れています。会員さんの満足感といったものも十人十色ですから、一人一人に声をかけて、コミュニケーションをしっかりとることを心掛けています。

そこで基盤ができて「試合を経験してみたい」となれば、アマチュアの試合からっていうことで。最初から「プロでやったらどうだ」っていう考えはまったくないんです。

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段階があるということですね。

ゆくゆくはRISEやK-1ルールへの対応も当然視野に入れてるんですが、やはり3分5Rのヒジありルールで通用する選手を育ててみたいですね。僕もこれまでに色々なルールで戦ってきましたが、3分5Rのムエタイルールが一番奥が深くて面白いですから。そのためにも今は慌てる時期ではないということです。

ムエタイは避けて通れないと。

3分3R制の試合ももちろん素晴らしいです。お客さんも喜んでくれますしね。しかしムエタイという壁がある以上、チャレンジはしていかないと。タイ人を避けてるって思われるのは心外ですから。道内の選手にもこういった部分に意識を向けてほしいっていう気持ちはありますね。

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覚悟を持った選手に育ってほしい

オープン半年で早くもカミナリモン札幌大会に選手を送り込んでいますね。

「出てみたい」という話がチラホラでてきたので、様子見で出した感じですね。今回は試合を控えてるのに練習に来ない選手がいても、あえてなにも言わなかったんです。案の定、試合には負けるわけですから「どうして負けたかわかるか?」って聞く感じで。やはり考えが甘いですよ。アマチュアだからって練習を疎かにしていいわけがない。

プロ・アマ関係なく、出るからには必死で練習しなさいと。

そうです。これがプロだったら問題外ですよ。試合前にチョロっと調整して出場する選手もいますけど、試合をすればその選手の「人間力」の大小が全て出ますからね。お客さんからお金もらってやってるわけですからそれなりの仕事をしないと。

grabsのプロ練でも言うんですけど、お客さんから「さすがだな」と思われるオーラを出している選手、入場シーンだけでお客さんを呼べる選手っていうのは日頃の練習量と覚悟が違うわけですよ。

僕が札幌に帰ってきて一番感じている部分がそういった意識の部分です。みんな覚悟が足りないと思いますよ。技術云々じゃなくて覚悟が大事。どこまでキックに懸けることができるか。そういった「人間力」を出せる選手が出来てくれば、おのずとお客さんも来てくれるしキックファンも増えていくと思います。

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北海道は会長をはじめとして、大宮司進さんや輝浪さんなどトップレベルの選手を数多く輩出していますから今後が楽しみですね。

本当ですね。実際、まだまだダイヤの原石がいると思うんですよ。問題はキックボクシングに触れる機会が少ないということ。 札幌に限らず地方でもキックボクシング教室みたいなものを開いて、そういった機会を作っていきたいですね。

現在の指導スタイルに影響をうけた時期、もしくは人物等がありましたら教えてください。

やはり小国ジムで練習をした日々でしょうか。パイブーンというタイ人トレーナーがいたんですが、指導方針にしろ戦い方にしろ、彼の指導のおかげで現在の僕があると思っています。

軍隊みたいなトレーニングで、ミットにしてもガチで蹴ってくるし、連打にしても1Rで100発くらい蹴らされたり、 練習も長くて終わるのが0時近くになったり、「こんなんで強くなれんのかな」って、最初は反発もあったんです。オランダなんかに行くと練習時間は短いんですよ。早めに上がって疲れを残さないスタイルだったんで。

でも、僕がどうしてこれだけ長く現役生活を続けていられるのかって考えたときに、やはりパイブーンのトレーニングで養われた精神力と基礎体力があったからだと思うんです。それが今の若い選手に当て嵌まるのかは別にして、僕のキックボクサーとしての基盤を作ったのはパイブーンとの練習なんです。

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地方にもムエタイを伝えていきたい

過去に会長が主催したイベント「NORTH LEGEND」ですが、今後も開催される予定はありますか?

あります。ただ現時点では、お客さんが本物の魅力をご存知のないと思うんです。試合中にダウンをとってもシーンとしてるときがありますからね。やるからには後楽園ホールのようにダウンを取ったら地響きがおこるくらい盛り上げたいです。そのためにはやはりトップレベルの選手を呼ばないといけない。トップレベルの選手の動きや殺気といったものを会場で体感してもらうのが一番ですよ。

選手のモチベーションを上げるために何かビジョンをお持ちですか?

道内のジムが団結して、北海道キックボクシング連盟みたいなものを作るのも面白いかと思うんですけどね。各階級にランキングを制定して「BOUT」等でランキング戦やタイトルマッチを行えば、選手のモチベーションも上がるはずですよ。アマチュアトーナメントも作って、アマチュアからしっかりと育成すると。ゆくゆくは道内勢vs本州勢の対抗戦なんかを企画すれば盛り上がると思うんです。

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対抗戦というのは面白いですね。会長は本州とのパイプも太いですから現実味のあるお話です。

僕なんかじゃ僭越なんですけどね。でも手段はどうであれ、道内のキックボクサーたちが一つの目標に向かって邁進できるというのは素晴らしいことだと思いますよ。

今年の抱負をお聞かせください。

さっきも触れたんですが、キックボクシングに触れ合う機会を増やしていくのが大切だと思っています。これまでもキックボクシングというスポーツを広めるべく、札幌で色々なイベントに参加させていただきました。

しかし、一般の方々はK-1とキックボクシングやムエタイがイコールというか、ごちゃ混ぜになっているんですね。僕が伝えていきたいのは本当のキックボクシングとはどういったものか、本当のムエタイとはどういったものかということなんです。

親父の田舎の浜益っていうところは何にもないところなんですが、子供は沢山いるんですよ。今考えているのは、そういった地方に出向いて教室なりイベントなりを開いて子供たちにキックボクシングの良さを伝えること。そういった活動が実って将来、タイ人と互角に渡り合える選手が北海道から生まれれば嬉しいですね。

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【TOMONORI プロフィール】1977年、札幌市出身。本名・佐藤友則。WMCインターコンチネンタルフライ級王座、UKF世界バンタム級王座、WBCインターコンチネンタルフライ級王座等々、獲得タイトルは多数。本場ラジャダムナン、タイ国王生誕記念試合等で幾多のKO勝ちを収めているところも、日本人としては特筆もの。現在は札幌市東区に自身のジム「grabs」をオープンし、後進の育成に力を注いでいる。

ジム・道場データ

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山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。