BOUT-31ダイジェスト:観客熱狂・全試合KO決着も対抗戦は道内勢惨敗

ノースエリア格闘技イベント BOUT-31
2018年3月4日(日)札幌市・コンカリーニョ

首都圏ジムからの刺客を道内勢が迎え撃ち、対抗戦さながらの様相を呈した今年度初のBOUT。注目されたメインイベントは、AKINORI(RISEライト級8位/蹴空ジム)vs 川島史也(同級6位/BattieNation)のRISE公式戦。両者ともにメインの名に恥じない激闘を展開したが、2RにAKINORIが川島の強打の前に散った。

その他のアンダーカードもすべてKO決着となり、興行的には幸先の良いスタートとなった。が、北濱精悦(TARGET SHIBUYA/小樽出身)、北田裕二(Grabs)など道内勢が相次いでKO敗。道内ファンにとってはほろ苦い結末となった。

メインイベント

▼RISE公式戦ライト級3分3ラウンドEXR1R
・川島史也(同級6位/BattieNation)
・AKINORI(同級8位/蹴空ジム)
勝者:川島 2R 1′04 TKO

打ち合い上等。抜群の強打をほこる川島史也。直近の試合は昨年10月にディファ有明で行われたRISE-120。同級2位の北井智大(チームドラゴン)と対戦し、ダウンを奪われた末に敗れている。対するAKINORIも大阪DEEP KICKでの初回KO敗を経て、BOUT-28でのパッカシット戦勝利で首の皮一枚で踏みとどまった。両者ともに再浮上をかけてのサバイバルマッチといったところか。

1R、AKINORIは右ローと左ミドルで手数を重ねる。動きは軽快だ。対する川島も蹴りに対するリターンが早い。ひとつの攻防が必ず川島のリターンで終わり、仕上がりの良さを感じさせた。AKINORIは手数が出るもののスピードとキレに精彩を欠き、回転数の歯車が川島有利に働いてしまう。中盤、川島は早くも右ストレートのタイミングを掴み、カウンターを合わせはじめる。AKINORIも左ミドルで応戦するが、川島のリターンは止まらない。

2R、ローに対してカットするそぶりを見せなくなった川島。勝負にきている様子。コーナーに詰めると左ボディから右ストレートをヒットさせ、AKINORIをグラつかせる。さらにアッパーも投入し畳み掛ける川島。AKINORIも的確に右ローをあわせるが、川島にカットの意思はなく、逆に右ストレートをカウンターで合わせる。

ダメージが顕著なAKINORIはコーナーに詰められると横を向きくの字に。体勢を立て直すために正面を向こうとしたところに川島の右ストレートを被弾し崩れ落ちた。レフェリーはカウントすることなく試合をストップ。全身で喜びを表す川島。AKINORIには痛い敗戦となった。

セミファイナル

▼RISE公式戦フェザー級3分3ラウンド
・出口智也(忠和會/RISEバンタム級6位)
・嶋田将典(StayGold)
勝者:出口 1R 1′40 KO

前日計量ではよく笑い口数も多かった出口。調子は良さそうだ。対する嶋田は再計量でようやくクリア。悲壮感が漂う。1R、積極的に仕掛けたのは嶋田。細かいパンチの連打。伸びのあるミドル。飛び蹴りまで飛び出した。前日の悲壮感を払拭する攻勢。が、出口が右ローをヒットさせると一拍の間が。明らかに出口の破壊力に動揺したことが場内に伝わった一瞬だった。これといった攻撃はしないが、前進するだけで圧力をかける出口。

嶋田は懸命に手数を出すが、「こっち来るな」感が伝わってくるため、説得力がない。出口はコーナーに詰めたところで、ようやくフック一閃。ストンと腰から落ちる嶋田。唖然とした表情の嶋田。再開後、嶋田はバックブローを繰り出すが、ダメージが重くよろよろとバランスを崩してしまう。

そんな嶋田に出口は右ストレートをヒットさせ二度目のダウンを奪う。出口は再開後に再び右ストレート。おでこに当たったが、嶋田は倒れてしまう。相当の破壊力だったのだろう。計3度のダウンで試合はストップ。ほとんど手数を出すことなく試合を終えた出口であった。

第三試合

▼RISE公式戦ライト級3分3ラウンド
・北濱精悦(TARGET SHIBUYA)
・KENTA(HAYATO GYM)
勝者:KENTA 3R 2′41 TKO

ベストバウトの呼び声が高かったのがこの試合。HAYATOジムの応援団も大挙して来場し、どちらが地元選手かわからないくらいの声援が飛び交った激闘だった。1R、サウスポーの北濱に対しKENTAは右ミドルとストレート。このミドルが非常によく、北濱が軸足にローを合わせてもバランスを崩すことなく連続で蹴り続けた。軸足にローを合わせてリズムを作りたい北濱には嫌な展開。

2R、KENTAの右ミドルに対し、北濱はスウェイしてからの攻撃へシフト。その場でのスウェイではなく、スウェイするときに一歩下がり、攻撃に転じるときに一歩進むといったことを繰り返すため体力の消耗が激しい。対してKENTAの攻撃はコンパクトだ。決定打の面でもKENTAが優勢。

3R、開始早々にKENTAが左のハイキック。サウスポーである北濱の死角からヒットし、北濱はダウン。前方にむかって倒れる危険なダウンだ。再開後、左腕が上がらなくなってきた北濱に、KENTAは右ストレートを増発して畳みかける。被弾した北濱は大きくのけ反り、マウスピースを吐き出す。

ラスト1分、北濱は起死回生の胴回し回転蹴りを放ち会場を沸かせる。なおも左ミドルで攻め込む北濱だが、消耗が激しく動きはスローリー。KENTAが右ストレートを合わせると、北濱は大の字ダウン。レフェリーはカウントせずにストップした。

第二試合

BOUTキックルール フェザー級3分3ラウンド
・竹内直矢(ベラトレオ函館)
・大澤辰徳(蹴空ジム)
勝者:大澤 1R 1′07 KO

アマチュア大会では幾多のKO勝利を演出し、秒殺王の名で恐れられた大澤がプロデビュー。対する竹内はパンクラス札幌大会を主戦場とするMMAファイター。空手出身者だけに大澤を攻略する手腕に注目が集まったが……
。1R、じっくりと圧力をかけたい竹内だったが、大澤の飛びヒザ・飛び蹴りで強制的に後退を余儀なくされる。下がらせてしまえばペースは大澤のもの。台風のような連打の前に竹内はなす術がなかった。結局、パンチで2度のダウンを奪った大澤が開始1分で試合を決めた。竹内はしばらく起き上がれなかった。蹴空ジムからまた一人、個性派ファイターが誕生。次戦が楽しみだ。

第一試合

RISE公式戦58㎏契約3分3ラウンド
・甲斐康介(HAYATO GYM)
・北田裕二(Grabs)
勝者:甲斐 1R 2′31 KO

今回がプロデビュー戦の北田は、ボクシングをベースとする豊富なキャリアを持つ。対する甲斐は試合数は少ないものの、HAYATOジムでトレーナーとして活躍する実力者。1R、硬さが目立つ北田は緊張のあまり距離感がつかめていない様子。対して甲斐は、北田の距離にはいるや否やクリンチで距離をつぶし、離れぎわには必ず攻撃をくわえ加点する。甲斐が距離を制圧している印象。

中盤、偶発的なバッティングで両者が出血。これを境に試合はヒートアップする。北田がパンチの猛攻でロープに詰めるが、甲斐は組み付いて決定打を許さない。甲斐の攻撃で際立っていたのは、離れぎわの右ストレート。北田は再三被弾し、ダメージを蓄積させた。終盤、離れぎわの右ストレートを被弾した北田がグラつく。そこにパンチをまとめた甲斐が最初のダウンを奪う。立ち上がった北田はふらつきを隠せない。再開後すぐに甲斐の右ハイキックがヒット。これが効いた。

甲斐がパンチをまとめると、たまらず北田はダウン。レフェリーが試合終了を告げると同時に、北田陣営からもタオル投入。最初のハイキックが致命傷となった。敗戦後、北田は観客席を向き、しっかりと視線をあわせ一礼。これはなかなかできない振る舞いだ。立派だったと思う。

オープニング・ファイト

BOUTジュニアキックルール
1分30秒2ラウンド

・那須川龍心
(TEAM TEPPEN/EXPLOSION・1位)
・佐藤勇波
(Grabs/EXPLOSION・6位)
勝者:那須川 判定3-0

神童・那須川天心の実弟・龍心と、キック8冠王者TOMONORIの実息・勇波が激突するジュニア版・夢の対決が実現。両者は過去に対戦しており、那須川が判定勝利している。1R、両者ともに軽快な動き。那須川はパンチのフェイント、佐藤は探りのローで様子をみる。那須川の腕をぐるぐる回す「いくぞ!」といったジェスチャーに会場がなごむ。中盤に那須川が飛び蹴りを繰り出したあたりから試合はヒートアップ。那須川が手数でロープに詰める場面が多くなる。那須川が4発出して、佐藤が1発かえすといった展開。

2R、ゴングと同時に前にでる那須川。小刻みなステップから左右のパンチと右の蹴りで佐藤を追い詰める。佐藤は軽快なサークリングでいなしながら、要所要所でミドルをヒットさせる。圧力負けせず綺麗に捌いた佐藤だったが、圧倒的な手数で那須川有利といった印象は覆せなかった。ジュニアの試合ながら、もう少し長いラウンドを見てみたいと思わせた好試合。

写真提供:BOUT実行委員会
photo & text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。