一試合一試合、全てがターニングポイントだと思う | パラエストラ札幌・北原史寛さん

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インタビュー第5回はプロフェッショナル修斗・バンタム級世界ランキング5位の北原史寛さんにインタビュー。いよいよベルトが射程圏内になってきた北原さんのストイックな私生活とは?

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「お金はあとでいいから」

FaceBookのお写真を拝見しましたが、見事にシェイプされたお身体ですね。減量といっても、もう落とすところがないのではありませんか?

僕の場合、減量苦は宿命ですからね(笑)。
もともとフェザー級が適正階級なんですけど、デビュー当時のフェザー級は激戦区でしたから、パラエストラ札幌の俵谷先生と相談してバンタム級でスタートしようってことになったんです。そうしたら、世界ランカーにまでなっちゃって。こんなことになるとは思ってなかったんですけどね(笑)。

最初からプロ志望で入門されたのですか?

いえ。最初はブラジリアン柔術コースに入門したんです。大学の柔道部を退部して、しばらくアルバイトに精を出してたんですが、やっぱり身体を動かさないと物足りなくて、 パラエストラ札幌に柔術コースを見学しにいったんです。

柔術の稽古は部活動のように「勝利」を強制されるところがなくて、すぐにハマッてしまいましたね。趣味レベルで格闘技を楽しむっていう価値観は、当時の僕にとってはすごく新鮮だったんです。

プロに転向したきっかけは?

僕が希望したわけではないんですよ(笑)。当時は楽しく和気あいあいと練習できるのが楽しかったし、プロの世界は甘くないとわかってたんで。

修斗用のプロテクターを薦められても、「お金ありませんから」っていつもズラしていたんです。そうしたら、ある日ジムに行くと僕用のプロテクターが用意してあって、「お金は後でいいから」って言われて(笑)。

先生が一枚上手でしたね(笑)。ところで北原選手は相手のパンチにカウンターでハイキックを合わせるなど、打撃もハイレベルです。そういった技術はどちらで習得されたものなんですか?

初期の頃はグラップリングだけで勝負できてたんですけど、レベルが上がってくると打撃の必要性を感じまして、東京のセンチャイ・ムエタイ・ジムに出稽古に行ったんです。ミドルキックの蹴り方をはじめ、基礎から教わりましたね。

それから、札幌でもボクシングのトレーナーについてミット持ってもらったりしてたんですけど、あれは僕の中では大きかったんです。「ミットってこうやって持つものなんだ」って目から鱗の体験でしたから。

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視野を広げることが大切

ターニングポイントになった試合があったら教えていただけますか?

僕は試合で強くなるタイプの選手だと思うんですよ。毎試合、明確な課題をもって試合してるので、一試合一試合がターニングポイントっていう意識でやってます。

今回は長期に渡る東京修行ですが、住み心地はいかがですか?

札幌が一番なんですけどね。空気がきれいだから(笑)。でも、選手層が桁違いですからね。自分を追い込める環境は東京が一番ですね。それからお金がかかります、こっちは。
ボクシングでもウェイトでも、ちゃんとした所でちゃんとした人に教わろうと思ったら、それは覚悟の上なんですけど。

実感としてプラスになっていますか?

まだ試合でだしてないんで一概には言えないんですけど、経験値を上げるというか、視野を広げるって大事だと思うんです。もし札幌から出ないでいたら、僕の視野は狭いものになってたと思うし。

Aクラスに昇格してから勝ち星に恵まれたのも、そういった出会いがあって、いろんなものを見たり聞いたりして作られたものなんで。ただガムシャラに練習するだけじゃ強くはなれないと思いますよ。それに引退してから後進の指導にあるときにも絶対に生きてくることですから。

東京ではどちらのジムで練習されてますか?

パラエストラ東京を拠点として、交友のあるジムを何件かまわる感じですね。こっちは軽量級の選手が多いんで、自分の実力を試すにはもってこいなんです。打撃ではランバーさんのジムでムエタイを教わってます。ムエタイってホントに難しいですね。ホント難しい。

怪我も多いのではありませんか?

いや、怪我はないですね。怪我をしたら終わりなんで、メッチャ気を使ってますから。僕の場合、怪我をしそうな危うい状況を察知するのが早いんですよ。だから怪我をする手前で体勢を入れ替えたり、自分から転んだりして回避できるんです。

食事ではどのような点に気を使いますか?

まず、外食はほとんどしないです。添加物がなに入ってるかわかりませんからね。僕は食品添加物に対するアレルギーがあって、変なものを食べるとすぐに体調を崩すんです。

だからその日食べた食事の詳細をネットで調べて、どの食材が身体に悪かったのか調べたりしてますね。そうすることで、この食材は関節に良いとか、体重を落としやすいとか、いろいろわかってくるんで。

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「気がついたらベルト」が理想

オフの日はなにをして過ごしますか?

僕、趣味が銭湯めぐりなんですよ。いいですよぉ、銭湯めぐり(笑)。こっちはサウナが別料金なんです。僕的にはVIPの人がサウナに入るみたいなイメージです。

そして東京の風呂はすごく熱いんですよね。「江戸っ子は熱い風呂にザブッと入って、サッと上がるんだぜ」みたいな(笑)。そういった下町文化みたいなところは、故郷のサロマ町と似ていて僕は好きなんですけど。

たまに「東京の人は冷たい」みたいな話を聞きますが、全然そんなことないんですよ。とても人情味が溢れてて、いい人ばかり。道を聞いたらちゃんと教えてくれるし(笑)。

周囲からはベルトを期待されている部分もあると思いますが、プレッシャーは感じていますか?

プロとしてやってる以上、常にベルトは意識しています。ただ、ガムシャラに「ベルト、ベルト」っていうのは好きじゃないんです。ベルトが目標っていうんじゃなくて、MMAファイターとして「打・投・極」すべてに秀でているっていうのが僕の理想なんで。

それを達成する過程で気がついたらベルトに手が届いていたっていうのが理想ですね。そういう意味ではアンデウソン・シウバは刺激をうける選手です。強いけど、力は抜けてるっていうか。かもし出す雰囲気がリラックスしてますよね。

9月16日の凱旋試合について、抱負をお聞かせください。

結局、日々の自分との戦いだと思うんですよ。減量ひとつとっても気を抜かずにしっかりやってれば、結果はついてくるんで。あとは、自分を信じて自然体でやるだけです。相手の村田選手がどうこうじゃなくてね。

ただ、札幌にいたときのほうが勝率は良かったんで、東京修行がプラスに出るかマイナスに出るかっていうのは、いつも考えちゃうんですけど(笑)。でも、しっかり東京で学んだ成果を見せることができれば、この先、道が拓けると思うんです。

ジム・道場データ

写真提供:ダブルティーエラ
Text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。