「生きることそのものが武術」才色兼備の女流武術家が登場! | 札幌太極拳練精会・川村ゆりかさん

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インタビュー第15回は札幌太極拳練精会・副代表、川村 ゆりかさんにインタビュー。才色兼備の女流武術家が誕生するまでの道程をお聞きしました。

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生き方を模索した学生時代

――ブログを拝見しますと趣味が多彩ですね。

 多彩ってわけじゃないですけどね(笑)。
 ジャズを歌ったり、絵を描いたりっていうのはわりと好きですね。最近ではダンスを鑑賞したりとか。あくまで観るだけなんですけど、この人は武術的な身体の使い方だな、この人は違うなみたいに なんでも太極拳に関連付けて観ちゃったりしますね。お酒も大好きですよ。

――幼少の頃はバレエをされていたとか?

バレエは3歳から始めて10年くらい続けたのかしら。 でも父が空手道場を主宰していた関係で、次第に空手に興味がでてきて。それが格闘技との出会いです。 結局、小学校の5年生から大学時代まで空手一色でした。

――学生時代はどんな感じだったんですか?

お転婆というか男勝りというか(笑)。空手部にいた頃は髪型もベリーショートで背も高かったので、女性によくモテてしまいましたね。

――ヅカジェンヌの世界ですね。空手の選手時代のことをお聞かせください。

高校時代には選抜選手にも選ばれて、組手中心にかなりハードにやってました。 そして当時は常にハードな練習を課していないと技量を維持できないというスパイラルの中にいたんです。

でも大学生・社会人になるにつれ、時間的にも年齢的にもハードな練習というのは減っていくわけですから、当然の如く技量も下っていくわけですよね。 私の場合は大学時代ですでに年齢的な限界を感じていたというか、挫折にも似た感覚をもっていたんです。試合にも継続して出ていましたが、男子と戦ったらどうなんだっていうと、やはり勝てない。

そうなると年齢は越えられないわ性別は越えられないわで、壁にぶち当たってしまって。「私には何ができるんだろう?私に残されている可能性ってもうないんじゃないか」って絶望的な気持ちになっていたんですね。その状態をなんとかしたくて太極拳に活路を求めたわけなんです。

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――空手を続けようとは思わなかったと。

もとより高校時代から人を殴るのは嫌いだったんです。私が空手に求めていたのは戦闘技術ではなく、人生哲学のようなものだったんですね。

武道に対して、生きていく上での道しるべになるような教えがあるんじゃないかって期待する部分があって、それを追いかけていたんだと思うんです。でも納得いく答えが見つからず身体だけが鍛錬でボロボロになっていく。そんなことがとても不自然に感じていたんです。

――太極拳に転向されてからはいかがでしたか?

最初は競技太極拳をやっていて全国大会などにも出場していたんです。意地になって好成績を残すことが答えを見つけることに繋がるんじゃないかって考えていたんですね。でも全国大会で2位とか3位になっても一向に満たされることはなくて・・・。

――短期間で全国大会で成績を残すとはさすがです。

バレエと空手の下地があったからだと思うんですけどね。しかしそういった部分も私には不満があったんです。異なるスポーツをやっていて身体が出来てるからって、始めてから1、2年で競技会で優勝できたりするのはなにか違うんじゃないかなって。

外面の動きの綺麗さを磨く術を知っていても、魂の部分を磨く術を知らない自分がいたんです。競技会で好成績を収めれば収めるほど、「私の中には確かなものがなにもないんじゃないか」という葛藤が大きくなっていきました。

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生きることそのものが武術

――そんなときに現在師事されている川村先生に出会ったのですね。

当時、札幌太極拳研究会という団体を主宰していたんですが、一人でやっていても得られないものってあるんですよ。それで出稽古という形で色々な先生やセミナー等で教えを受けている中で出会ったのが川村老師だったんです。

――初めて教えを受けたときの印象を教えてください。

子供の頃から追い求めていたものがそこにあったっていうか、「この武術だ!」ってすぐにピーンときましたね。「やっと出会えた~!」みたいな(笑)。

確かに私は競技会で好成績を収めることができました。でも私が求めていたのはそれに見合う内面の完成度、「魂」の部分なんです。川村老師は私がやってきた「形」の太極拳に「魂」を吹き込んでくれるとすぐに確信できました。

――自分の中に可能性を見出せたわけですね。

老師は女性としてのしなやかさで重力と調和できると教えてくださいました。型にしろ戦い方にしろ、女性として表現できる武術体系・練習体系が確立されていたんです。

そこに自分がまだまだ伸びていけるという可能性を感じることができました。おそらくこれは一生追い求めていけるものだと・・・。道がパァーッと開けたっていう感じでしたね。

川村老師は「競技で活躍している選手がなんとなく体験にきたんだろう」くらいに思っていたらしく、最初はぞんざいに扱われましたけれど(笑)。まさかその場で弟子入りを希望するとは思ってなかったと後に仰ってました。

――弟子入り後の変化はどういったものでしたか?

心身ともに健康的ですこやかに過ごせるようになりました。まさに私が求めていたものです。川村先生の武術って結果として強さも身についていくし、健康にも良いし、日常生活でも役立つし、全てにおいて整合性があると思うんです。

今までの私はそこの部分を別々に求めないといけないと思っていて、健康にいい準備体操をして、強くなるにはまた別のことをして、太極拳を良くするために別のことをしてみたいに整合性がなかったんですね。

――学生時代は体がボロボロだったと仰ってましたが、そちらのほうも変化がありましたか?

劇的な変化がありました。昔はとにかく満身創痍でしたから、首は痛い、腰は痛い、股関節は痛い、手首は痛いでしたから(笑)。でもそれが全部治ってしまいました。

他にはアレルギー性鼻炎も治まりましたし。身体に無理をかけなくなったからでしょうね。身体にとってより自然な動き方、立ち方、重力に抗わないといったことを通じて、 本来身体が持っている可能性が目覚めてきたんだと思います。

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――現代人が忘れかけているものですね。

身体の「通り」というか「巡り」が良くなるんですね。血流と言ってもいいし、人によっては「経絡」や「気」と呼ぶ人もいると思います。

昔は身体を痛めつけて強さを得るという感覚だったんですが、太極拳だと体調が良くなって、なおかつ対人稽古でも強くなるといった現象がおきましたので、「こんな気持ちよくやってていいの?」って 逆に不安になっちゃうみたいな(笑)。

対人関係にしても以前なら衝突していたものが気楽に交流できるようになったり、精神的にもスーッと楽になりますから。

――太極拳から離れたときの息抜きはどんな事をなさいますか?

やっぱり飲むことですね(笑)。でも息抜きという感覚はないですよ。苦しいことを我慢してやるから息抜きになるんであって、私は楽しんでやってますから。自分の身体の可能性を楽しんでいるので、ダンス鑑賞にしても歌を歌うにしても武術に通じる側面を必ず探します。 カボチャを切る場合でもちゃんと「勁力」を使えているか、車を運転する時でも重心が正しい位置にあるかとか。

そういった意味では武術を切り離している時間はないといってもいいですね。練習のために時間を取るといった概念すらないと言っていいでしょう。 したがって、昔のように練習時間が取れないから技量が下るといった現象もありません。

武術を「殺傷する技術」として限定的に捉えてしまうと辛くなる部分ってあると思うんです。でも武術を「生きること」として捉えれば、ダンスも武術だし音楽も武術であって全てが楽しい。 生きることそのものが武術だと考えれば、あらゆるものが武術に共通するというのは自然な解釈なんです。

――教室を拝見しましたが、生徒の皆さんも実に楽しそうに学んでいましたね。

年齢を重ねているはずなのに転びにくくなったとか、腰痛がなくなったとか、ご自分の身体の変化に驚いている生徒さんが多いのは嬉しいことです。

会員さん一人一人がご自身の生活の中で身体の可能性を楽しめる、そこが太極拳の醍醐味だと思いますね。純粋に「強さ」を追究するのが格闘技の素晴らしさだとすれば、純粋に「身体の可能性」を追究するのが太極拳の素晴らしさではないでしょうか。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

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【川村ゆりか プロフィール】1980年生まれ。旧姓・藤原。札幌太極拳練精会副代表。クラシックバレエ、空手を経て中国武術の世界へ。活躍は道内にとどまらず、全国大会等での受賞歴は多数。その優雅さを極める演舞は、観る者を魅了してやまない。2010年より師・川村賢老師より八卦掌を学び、その魅力に開眼。現在は自身が直接指導する八卦掌教室を開講し、後進の指導に邁進している。

ジム・道場データ

西区体育館 所在地

東区体育館 所在地

中島スポーツセンター所在地

Photo & Text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。