ノースエリア格闘技イベント BOUT-34
2018年10月28日(日)札幌市・ホテルエミシア
▼第6試合
RISE公式戦バンタム級3分3R EX1R
・拓也
(蹴空ジム / RISEバンタム級9位)
・村山智耶
(HAYATO GYM / RISEバンタム級11位)
※勝者:拓也 KO 1R 2’35
囁かれる拓也限界説
「拓也はこのレベル止まり。これ以上、伸びしろはない」この拓也限界説が囁かれたのは、筆者が知るかぎり3度ある。1度目は2017年3月に行われたBOUT-26で、山川賢誠に敗れた直後。当時、拓也はRISEのバンタム級新人王のタイトルを獲得してはいたが、山川にはまったく歯が立たず、2ラウンドKO敗で敗れている。
「山川ごときにあんな負け方をしてるようじゃ、先はないだろう」これが業界内に充満した拓也に対する評価であった。筆者も、当時から拓也を応援する記事を書いてはいたが、この空気に逆らって「絶対に伸びる」とは言い出せなかった。
転機となったビッグイベント
しかし同年7月に行われたホテルエミシアでのビックイベント・BOUT-27で、拓也はこの限界説を覆してみせる。対戦相手はシュートボクシングの日本ランカー・亜月。下馬評では拓也に勝ち目はないと言われていた。拓也は単なる引き立て役だと思われていたのだ。
が、拓也は主導権争いで優位に立つと、最終ラウンドにはダウンを奪って判定勝ちをマークする。ダウンを奪うまでの手腕も高く評価された一戦だった。二度目に限界説が囁かれたのは2018年3月に、敵地・福岡で行われた小崎貴誠戦の直前である。小崎は拓也よりも上位にいるランカーで、地元福岡では有望なエース候補として知られている逸材だった。
評価を上げた敵地での下克上
「拓也では勝てない。そこまで伸びる素材ではない」これが戦前の下馬評であった。拓也はランキング上位に食い込む素材ではないと見られていたのだ。加えて当時の福岡勢は、札幌勢に対して連敗を喫しており、地元のメンツにかけて負けられないという背景もあった。筆者も正直、拓也には分が悪いマッチメイクだと思った。
ところが、ここでも拓也は限界説を覆してしまう。なんと小崎にボディを効かせて圧倒し、フルマークの判定勝ちを収めたのである。「拓也勝利」の報告は、脱帽もののサプライズ報告であった。
三度目の限界説は、2018年7月に行われた樺島峻太戦の直後。対戦相手の樺島はランキングにも入っていない格下の選手。拓也にとっては倒して当たり前の選手だった。が、押せ押せ一辺倒の低レベルな攻めに終始し、倒しきることができなかった。筆者としても「本質的には相撲と変わらない試合」と酷評せざるを得なかったのである。
真価が問われる一戦となった村山戦
「拓也はこのレベルで終わり。もう伸びない」筆者の周辺でも「今度こそ」といった鼻息で、限界説を唱える関係者が目立った。そのような状況で迎えたのが、今回の村山戦なのである。それは万が一、下位ランカーの村山に足を掬われるようなことがあれば、事実上、ランキング上位への道が閉ざされることを意味していた。
しかしだ。ここでも拓也は限界説を覆してみせる。村山になにもさせず、1ラウンド2分35秒。飛び膝蹴りによるノックアウト勝利を収めたのである。詳細は後半のレビュー記事に譲るとして、とにかく拓也は三度にわたり限界説を覆したことになる。
選手を商品として捉え、品定めをすることが習慣となっている業界関係者の予想は、大方において的中する。「この選手はここまでのレベル」と判断を下せば、ほぼその通りになるものである。ここまで予想を裏切る選手は、少なくとも道内勢では珍しいだろう。
拓也史上、最大の進化を遂げる
これまでも試合毎に進化をみせてきた拓也だが、それは技術的・体力的な部分での進化であった。今回の進化では思考的な部分で大きく飛躍したように思える。相手の動きがよく見え、無駄な手数がない。拓也史上、最も進化の幅が大きい一戦だったといえるだろう。さらなる上位ランカーとの対決へむけて、大きくアピールしたことは言うまでもない。少なくとも拓也限界説が囁かれることは、当分ないに違いない。つづく、覆る拓也限界説・後編ではこの一戦の詳細を豊富な写真とともにお届けする。
山田 タカユキ
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