”欠落”を持ったファイター・吉田イサヲ、初メインを語る。 | ノースキングスジム・吉田イサヲさん

対戦相手の選手生命が終わるとわかっていながら関節を折り、後遺症が残るとわかっていながら顔面を殴打する。プロ格闘家というのは特殊な職業だ。ある意味、人間性の一部が”欠落”していなければならない。

このような選手が少なくなった昨今、今回インタビューした吉田イサヲ(ノースキングスジム)は、いまや希少となった”欠落”を持ったファイターである。1年4ヶ月ぶりのリング。初メインへの抱負を聞いた。

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去年の6月以来の試合となります。前回のバトルミックスを振り返ってみると?

試合自体はいいところもあったし悪いところもあったし、どっちもありましたね。ここいけたなというところもあったし、相変わらずダメだなあというところもあって。結局力及ばず負けたんだけど。今回は反省点を踏まえて練習してきたんで、どこまで試合で出せるか楽しみですね。

今回の相手はゴンズジムの若手・増田­恭介選手です。以前、同じゴンズジムのオニボウズ選手(当時、世界ランク6位)に勝ってるじゃないですか。やはり心理的には楽ですか?

油断はしてませんけどね。もう少し格上の選手と交渉してくれてたんですけど、やっぱりこの時期になると予定決まっちゃってる人がほとんどだったんで。

結構急でしたもんねこの話は。急なオファーでもテンションをすぐにパッと切り替えられるスキルが備わっているわけですか、ノースの選手は?

そうですね。わりとそんなもんだと思っているから(笑)。急なオファーでも大丈夫ですね。

吉田さんの場合、減量があまり必要ないでしょう?それも助かりますよね。

やっぱり楽ですね。ただ僕の場合、試合決まると落とし過ぎちゃうんですよ。

練習しすぎて落ちすぎちゃう?

僕は、あしたのジョー世代じゃないですか?ああいうの見てたから、減量イコール過酷じゃないといけないっていう固定観念があって。必要以上にやっちゃうんですよね。気がついたらこんなに落ちてるっていう・・・。

わかります(笑)。じゃあ、あまりストイックに考えないで、あしたのジョーの力石徹にならないように注意してるということですね?

「当日にそのリミットに合ってればいいや」くらいな軽い感じでやってます。

今回の対戦相手についてはなにか情報が入ってきてるんですか?

いや、全然ないんですよね。

戦略的にはやっぱりグラウンドに引き込んでということになるんでしょうか?

そうですね。やっぱりそれが理想的ですけど、やっぱりいきなり寝技ってならないですもんね。テイクダウンの攻防があって、その前に打撃があって・・・。

寝技やりたくても打撃やらないで寝技っていけないから。スタンドの時間をどうやって使うか、そこはテーマをもってパターンを考えてますね。

バトルミックスも年一回ペース。ほかに試合がないとなると、ちょっと間が空いてしまいますね。その間のモチベーションはどう保ってますか?

なかったらないで練習するだけなんで。試合ないからって腐ったりはしないです。とにかく、今できることを全力でやるだけ。いろいろ考えると疲れちゃうから、あまり考えないようにしてますね(笑)。

練習のほうは充実してます?出稽古とかはどうですか?

特別どっかに行ってるとかはないですね。月曜日はギムナシオン行って、それ以外はノースキングスジムで練習してます。

あと、能登崇くん(ノースキングス釧路)とかは試合前に調整しに来ますしね。お互い簡単に行き来出来る状況じゃないから、普段できない練習を集中してやってますよ。

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写真:試合前の追い込みで。打撃練習にも余念がない

本題に入りますが、今回のバトルミックスでは初メインを務めることになりました。心境を聞かせてください。

山本辰弥さん(修斗世界フライ級7位/ノースキングスジム)がずっとメインでやってくれてたから、メインの人の気持ちってわかんなかったけど、やっぱり地元でやってる以上は勝たないといけない。

前回のバトルミックスでは、僕も山本さんも結構いい負け方しちゃったから。メインの人間が勝たないとイベント自体が締まらないんだなっていうのは痛感しましたね。

前回の敗北では忸怩たる思いがあるということですね。

そうですね。セミもメインも負けちゃって。どんな形でもやっぱり勝たなきゃダメなんだなって。試合の中のテクニックとかそういうことではなくて、メインの人間がしっかり勝ってイベントを締めくくらないといけないという部分。

今回はそこが一番の教訓として活きていると。

今までの俺だったら、もっと面白い試合ができるとか思ってやってたんだけど、やっぱり勝ってナンボ。勝ち方が良ければそれに越したことはないけど、なんぼ面白い試合とかいい試合したとしても、負けたらなんの意味もないでしょう。

メインの重圧というやつですね。そんなとき相談できる人っています?

山本さんですね。僕、山本さんがいなかったら格闘技ここまでやってないし、山本さんに引っ張ってもらって今まで来たので。だから今回、自分がちゃんと引っ張って行きたいなって思います。

話は変わって、ノースキングスジムの選手ってグラチャンにも出てますよね。

能登くんが結構レギュラーで使ってもらってますよね。彼はグラチャンでチャンピオンになるっていうのが目標としてあるから、ジムとしても後押ししてるんですよ。

吉田さんは出ないんですか?

オファーいただければ出ますよ。自分から売り込むことはないですけど、基本的にはグラチャンだろうとパンクラスだろうとオファーがあれば出ますね。

たまたま話がないだけで話があれば出る準備はあると

そういうことですね。僕の場合は明確に修斗で上に行きたいっていうのがあったし、ジムとしても何とか修斗のリングでっていう思い入れがあったんですよ。

TTFのときもそうだったけど、個人的には良い条件であればどこのプロモーションに出てもいいと思ってますけどね。道内でも修斗 vs パンクラスの対抗戦なんてあれば面白いと思いません?

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写真:バトルミックス9。勝利後にファンから祝福をうける

先ほど自分が引っ張っていかないといけないっていうお話が出ましたけど、後に続く選手は増えてますか?

増えてないですね全然。ほんとにいつもと同じメンバー(笑)。でも格闘技やってる人自体は増えてるっていうか、修斗やってる人は少ないけど、ほかのアマチュアの大会とか見てもチームがいっぱいあるから、選手自体はいるんですよね。

問題はなんでしょうね。

ノースキングスジムの選手が増えるのもそうだけど、修斗やってる人が増えないと。絶対数が増えないとノースキングスジムの練習生が増えるということもないと思うんですよね。

そのためには何が必要だと思いますか?

アマ修斗にしても、いろんな選手が出てくれたらと思うんです。でもその前に、こっちからも行かないと向こうも出てくれないんじゃないかと思うんですよ。

行くというと、誘うということですか?

いや、僕らのほうから積極的に他のアマ大会に出場するということです。修斗のアマチュア選手が修斗以外の大会に出て、「修斗ってこんなに強いんだ」とかノースキングスジムにはこんな強いやつがいるんだと認識してもらうと。

そうすれば、「あいつとやりたい、あいつに勝ちたい」というふうになるでしょう?現時点では「あっちはあっち、こっちはこっち」になっちゃってて、壁ができている。アマチュアに関して言えば、色々なプロモーションの大会に出させてもいいんじゃないかって思うんですけどね、個人的には。

そういえば、山本さんも吉田さんもよく東京遠征とか行ってましたよね。ブラジリアン柔術の大会とかにもよく出てたし。

そうそうそう。僕とか山本さんがアマでやってた頃って、柔術の試合も出てたしグラップリングの試合にも出てたし、その中で修斗の試合もあれば出てたんで、毎月試合してたんですよね、ほんとに。試合があれば全部出てた。

そういった先輩がいれば、後に続く人たちも自分が試合に出て活躍するイメージが作れるんですけどね。

僕の周りでも「修斗って北海道でやってんの?」とか「試合って東京行かないと無いんでしょ?」って言う人がいっぱいいるんでね(笑)。

では今回のバトルミックスは、アマチュアに刺激を与えて裾野を広げるという想いもあるわけですね。その方々は応援にいらっしゃいますか?

そうですね、うちのジムはみんな来てくれます。

じゃあ、かっこいいところを見せて、「じゃあ、次は俺も」っていうことにならないとマズイと。

そうそう。偉そうなこと言ってね、「なんだ、あいつ弱いじゃねえか」ってなことにならないようにね(笑)。修斗も北海道でやってるし、輝ける舞台も用意されてるんだっていうのを見てほしいですね。

わかりました。では最後に、試合当日は自分のこういうところに注目してほしいというのがありましたら一言。

比較するわけではないんですけど、山本さんって完成されてる選手だと思うんですよね。打撃もできるしテイクダウンも強い。寝技も出来て、「打投極」の円グラフが均等に大きいっていうか。

僕の場合かなりいびつなんですよ、円グラフが。ここはこれだけあるけど、ここはこれだけしかない。いびつな「打投極」なんです。

だから正攻法ではないっていうか、正統派の人にはない面白さがある。イベント当日は、いい意味でお客さんが持ってる”修斗”のイメージを裏切りたいですね。

では健闘をお祈りします。本日はありがとうございました。

こちらこそ。ありがとうございました。

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写真:バトルミックス9。敬愛する山本辰弥選手と

【吉田イサヲ プロフィール】1976年5月28日、札幌市出身。アマチュア時代より卓越した”極め力”を発揮してきた北海道軽量級屈指のグラップラー。主に総合格闘技「修斗」のリングで活躍中。2014年のバトルミックス9では当時世界バンタム級6位のオニボウズをKO撃破して脚光を浴びた。生活信条は「生涯プレイボーイ♡」、趣味は「人間観察(女性限定)」。プロ戦績11戦5勝4敗2分。ノースキングスジム所属。

ジム・道場データ

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山田 タカユキ

山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。愛読書はさいとうたかおの「鬼平犯科帳」。
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