12月3日(日)東京・GENスポーツパレスで開催された「第5回K-1アマチュア全日本大会~アマチュア日本一決定オープントーナメント」において、札幌から参戦した一信会館が3階級を制覇&MVP獲得と躍進した。
一信会館からは劔物忍、金子慎、青木惇人、小島大輝の精鋭4名が出場。青木が大会MVP、他の3名もそれぞれ出場クラスを制し、道内勢の実力の高さを証明した。以下に大会当日の模様をお伝えする。
▲会場に到着した一信会館のメンバー。必勝を誓う
青木が大会MVPで賞金20万円獲得
チャレンジAクラス-55kg級では”一信会館の顔”となった青木惇人が登場。このクラスは参加人数が多く、参加クラスのなかでは一番の激戦区となったが、青木は順調に準決勝まで駒を進めた。
準決勝戦を前に、運営側から告知があった。反対のブロックで準決勝を勝ち上がっていた選手が、なんらかの理由で棄権扱いになったという。つまり、準決勝戦に勝てばそのまま優勝が決まるというのである。
拳の怪我をおしての出場だった青木。その拳は決勝戦まで温存しておくはずだったが、その必要がなくなった。準決勝戦にすべての力を投入した青木は豪快なKOで優勝を決めると、メンバーと喜びを分かち合う。
が、ここで事件が発生。運営側から、棄権扱いになったはずの選手と決勝戦を戦ってほしいという要望があったのである。準決勝に勝てば優勝だと言っておきながら、やっぱり決勝戦を戦えというのである。準決勝ですべてを出した青木の気持ちはどうなるのか。
結局、その要望に応じた青木陣営。一度緊張を解いてしまったあとでは、再度モチベーションを作り上げるのは厳しく、結果は無念の準優勝。今回は怪我と不運が重なったが、次回は万全の状態でベルトを勝ち取ってほしい。
なお、青木は準優勝ながら大会MVPを獲得。賞金の20万円をかっさらった。
▲大会MVPの盾と賞金を手にする青木惇人
難攻不落の劔物が返り討ちで優勝
マスターズBクラス-60kg級には予選トーナメントでMVPを獲得した劔物忍が出場。準決勝では痛烈なカウンターパンチを喰らい、鼻骨を骨折するアクシデントが発生した。
しかし「予選と同じくMVPを狙って欲を出したのが失敗だった」と自己分析するや、すぐさま気持ちを切り替えて形勢を逆転。冷静に相手の攻撃を捌き決勝にコマを進める。
決勝の相手は予選トーナメントで劔物に敗北している岩崎涼(AKSドミネーター)。リベンジに燃える岩崎陣営は、劔物のファイトスタイルをよく研究しており、下段から上段へと繋ぐ劔物得意の流れを作らせない。
こうした岩崎陣営の対策に劔物はインローと左ミドルを投入して対応、岩崎にペースを渡さず”打たせて獲る”スタイルを守り抜いた。予選トーナメントでの優勝を経て、一転して追われる立場となった劔物だが、研究されてもなお返り討ちにする技量はマスターズでは群を抜いている。
「次回はチャレンジでの参加も視野に入れている」と語る劔物。彼の魂はワンランク上のスリルを求めているのかもしれない。
▲決勝戦を戦った岩崎涼(左)と。劔物の大きく腫れた鼻が痛々しい
デビュー4戦目の金子がリベンジ優勝。
マスターズBクラス-65kg級を制したのは、劔物とは学生時代からの盟友である金子慎だ。準決勝では優勝候補筆頭の実力者・遠藤直人(クローバージム)からバックブローでダウンを奪っての決勝進出。
むかえた決勝の相手は9月の予選トーナメントで敗北している薄井竜一(クローバージム)だ。「薄井選手に勝つことだけを考えてきた」と語る金子は、膝蹴りの練習に多くの時間を割いてきたという。前回の対戦では、低身長の薄井に懐に入られたことが敗因だったからだ。
試合ではこの膝蹴りをカウンターで合わせる作戦が的中。徹底して薄井の前進を阻み、見事に雪辱を果たした。「佐藤先生と練習したことを、試合で出せたことがなにより嬉しい」と嬉々として語った金子は、まだデビュー4戦目の新人だ。
昨年11月には蹴空ジムの秒殺王・大澤辰徳と対戦。デビュー戦でありながら2Rまで持ちこみ、秒殺を免れるという特殊技能を発揮したが、今回はデビュー4戦目にして全日本タイトル奪取である。マスターズといえども突出したセンスの持ち主。今後の活躍に注目したい。
▲前列中央が金子。後にはK-1 WORLD GPフェザー級王者・武尊の姿も
凄ノ王もリベンジ優勝。全国区の力量を証明
チャレンジAクラス-70kg級は”凄ノ王”の異名をもつ小島大輝が、因縁の相手・白濱朗(MASTER JAPAN)を下し優勝した。準決勝ではローブローを被弾し股関節を故障。決勝では蹴りを繰り出すことができない状態にまで追い込まれていたが、改良を加えたパンチを駆使しての執念の雪辱だった。
今年の2月に行われた新空手K-2グランプリ予選でも対戦している両者。小島は合わせ一本を取られ、何もできずに惨敗した。しかしこの敗北が転機となり、パンチ技術の向上に取り組むこととなる。その成果が表れたのは今年11月に行われたPETER AERTS SPIRITの全日本大会だ。65kg級に出場した小島は、ジュニアエリート・塚本拓真(TANG TANG ファイトクラブ)を下し優勝した。
今回の白濱戦ではさらにフットワークを改良し、白濱得意の上下の連携を分断してみせた。股関節の故障がなければ、もう少し自身の理想を体現できたはずだ。”凄ノ王”の異名を持ち、道内では敵がいないといわれる小島だが、首都圏のトーナメントでは成績が振るわず「しょせんは道内レベル」という評価もあった。
しかし今回下した白濱は、今年3月のK-2 GRAND PRIXで準優勝している実力者だ。また、先月のPETER AERTS SPIRITの全日本大会で下している塚本拓真は、今回のK-1アマチュア全日本の-65kg級を制している。つまり、小島は今大会で二階級を制したといっても過言ではないのである。全国区の実力を証明したと宣言しても、疑義を挟む者はいないだろう。
▲11月、12月とアマチュアのメジャータイトルを手に入れた凄ノ王
3階級制覇&MVP。躍進の秘密とは?
予選トーナメントから数えると、実に380試合が組まれた今回のK-1アマチュア全日本大会。その決勝トーナメントにおいてチャレンジAクラスを含む3階級を制覇し、おまけに大会MVPまで獲得したのは一信会館だけだ。躍進の理由について一信会館の師範代・劔物忍はこう語る。
「普段、我々有段者はどうしても会員さんのミット持ちの時間が多く、なかなか自分の練習時間が取れません。躍進の理由を挙げるとすれば、大会前は段の有無に関わらずみんなが協力してくれて、選手の調整を第一に考えてくれたことです。常設道場がなく、時間も限られてますので、プロが在籍しているジムの様にはいきませんが、工夫すれば内容の濃い練習が出来るということです。また、佐藤代表も各選手の特長を見抜いていて、決して型にはめず、長所を伸ばす様な指導をしてくれるので伸び伸び出来ているということも大きいです」
プロ志望、マスターズ、ジュニア、レディースといった全てのカテゴリーで安定した成績を残しているのも一信会館の特徴だが、劔物のコメントを聞いて納得がいった。一信会館では安齋宙など、今回の四天王につづく世代が着実に育っている。2018年も同会館の動向からは目が離せそうにない。
▲司令塔・佐藤信一館長と劔物・金子・青木・小島の四天王の面々
写真提供:一信会館
text:山田タカユキ
山田 タカユキ
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