超新星・山川賢誠、覚醒なるか!?:BOUT-ZERO 2

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 先日、脇役専門で活躍する俳優たちがゲストとして登場し、ロケ現場でおこった笑い話を語るといった趣旨のバラエティ番組を見た。存在感の薄い脇役俳優は、ドラマの出演俳優だということに気付いてもらえず、現場のスタッフ達から、掃除や片付けを命じられる事が多々あるのだという。

第一試合に登場した山川賢誠もそんな男である。

普段着に着替えた山川は、本人から白状しないかぎり、格闘技のリングで秒殺KO劇を演じる男だとは、誰にもわからないだろう。いつだったか、イベント終了後の会場で、スタッフが慌ただしく片づけをしている中、一人だけ片づけをせずに傍観しているスタッフを見かけた。

(彼はなぜ、片づけをしないのだろう?)

と疑問に思ったが、よくよく見てみると、イベントに選手として参戦していた山川だったという次第。山川と面識のある筆者でさえそうなのだから、他のスタッフからは「イスを片付けろ」くらいの一言を浴びせられていたのかも知れない。

そんな山川が、またしてもKO勝利を演じた。要した時間は97秒である。このおとなしい風貌の男のどこに、そのような力が秘められているのか、全くもって不思議である。

筆者は試合の数時間前、山川に対し、仕上がり具合はどうかと尋ねている。

「大丈夫。勝ちますよ」

そう山川は答えた。それは、試合前のルーキーが強がるわけでもなく、または、自らに暗示をかけるべくポジティブな発言をしたというわけでもない。ただ単に、”これから起こるであろう事実を述べただけ”そんな淡々とした言い方だった。  

山川は、今年の7月に士道館・札幌道場に移籍している。ここにはRISEの全日本ランカー、永山敬之も在籍しているハイレベルな環境だ。

「辛かったら、いつでも辞めてもらって構いませんよ」

士道館・札幌道場の小堀師範は、山川が練習に参加するにあたり、こう言い渡したという。甘えの許されない環境で鍛えられた自信が、先の発言に表れたのかもしれない。 

対戦した関口は、空手仕込の強烈な蹴りを持つ。山川は、この関口の蹴りに強い圧力を感じ、パンチで前に出ることができなかったという。しかも関口は蹴った後、その場にとどまることがなかった。山川が蹴りをうけたあとに蹴り返しても、関口はその場にいないのである。蹴りだけの攻防では、関口がペースを握っていた。

このまま、山川にパンチを打たせず、蹴り主体の勝負に持ち込みたい関口。しかし、サウスポーに対して蹴り慣れていないためか、アウトローキックのモーションが少々ぎこちない。その一瞬の隙に、山川が得意の右フックを合わせてしまった。開始から80秒ほどの出来事である。

”バスーン!!”と大きな音がした。会場に響き渡るくらいの大きな音だったと記憶している。カウンターパンチのタイミング合わせが、いかに優れているかをこの音が物語っていた。

膝はつかないまでも大きく腰を落とす関口。コーナーに追い詰められながらも、前蹴りで突き放そうとするが、レフェリーはスタンディング・ダウンを宣告した。ニュートラル・コーナーで待機する山川にセコンドが指示を出す。”ここで決めろ”という指示が出ていたに違いない。

再開後、右のアッパー、フックを立て続けにヒットさせ、あっという間に試合を終わらせてしまった山川は、両手を突き上げて雄叫びをあげた。ここ最近続いた、不完全燃焼のフラストレーションを払拭するに十分な内容であったためだろう。

この試合での内容を評価され、山川はプロ昇格を決定。道内のキックボクシング・シーンをリードするプロ・キックボクサーがまた一人誕生したわけだ。次戦は函館で行われるBOUT-15。プロデビュー戦となる。プロの洗礼をどう捌くか。山川の動向に注目しよう。

写真提供:BOUT実行委員会
photo & text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。愛読書はさいとうたかおの「鬼平犯科帳」。
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