BOUT-32 レビュー@布施鋼治

みなさんお待ちかね。札幌出身のスポーツライター・布施鋼治さんによる、BOUT-32のレビューがBOUT実行委員会さんから届きました。早速お届けします!

text:布施鋼治 photo:山田タカユキ

初夏の北海道でキックボクシングが大爆発!7月8日、札幌のコンカリーニョで『BOUT 32』が295名(超満員札止め=主催者発表)の観客を集めて行われた。今大会はアンダーカードがなく、通常のBOUTならいずれもメインイベントというべきマッチメークが4試合も組まれ、第1試合から場内を熱狂の渦へと巻き込んだ。

また試合開始前には、北海道キック界の顔であるTOMONORIがリングイン。10月28日、新札幌のホテル・エミシアで『BOUT 34』の開催とともに、同大会で自身のラストマッチを行うことを発表した。「10月28日は現役最後の試合にしたいと思います。3年前、ISKA世界タイトルマッチで負けたポール・ザ・シウバとやります」

どんな試合形式になるかは未定。TOMONORIのリベンジか。シウバの返り討ちか。ホテル・エミシアでは昨年6月11日、BOUTが初興行を行い、メインイベントにはTOMONORIも登場し、エヴァン・ジェイズ(イギリス)とのISKA世界フライ級王座認定戦に挑み同王座を獲得している。リングに上がるのはジェイズ戦以来、1年4カ月ぶり。NJKFやBOUTで一時代を築き上げた北の小さな巨人は有終の美を飾ることができるのか。

メインイベント

▼第7代RISEバンタム級王座決定トーナメント一回戦 3分3R延長1R
・山川賢誠(同級3位/キックボクシングアカデミー札幌)
・出口智也(同級5位/忠和會)
勝者:山川 判定2-0

かつて拳を交わしていそうで交わしていなかった北海道在住の現役ランカー同士がBOUT32のメインイベントで激しい火花を散らした。しかも、この一戦には那須川天心が返上した第7代RISEバンタム級王座決定トーナメント一回戦の冠がつけられていた。

RISEの頂きを目指す山川賢誠と出口智也にとって、これほどモチベーションが高まるマッチメークはない。意外にも1Rは静かな立ち上がりだった。前蹴りで機先を制しようとする山川に対して、出口は後の先を狙うように攻撃を返していく。かと思ったら緩急をつけるかのようにいきなり山川を追いかけ、パンチの連打を狙う場面も。

そうした中、1R中盤から山川が試合の主導権を徐々に握っていく。前蹴りで出口のバランスを少し崩したかと思ったら、テンポのいい右ジャブで追い打ちをかける。負けん気の強い出口が前に出てくると、闘牛士のようにその突進を巧みにサバいた。

2Rになっても、山川の攻勢は続く。右ジャブでリズムをとりながら、左ストレート。出口が前に出てくるとサバいたり、クリンチして試合の流れを渡さない。3R、もうあとがない出口は開始早々前へ。この積極性が功を奏し、一発食らった山川の足元は一瞬グラつく。

ここぞとばかりに出口はラッシュを仕掛けるが、山川はクリンチで凌ぐ。そして左ミドルとカウンターのヒザ蹴りで反撃を開始した。その直後から観客席は「賢誠コール」と「智也コール」に二分されるほどの応援合戦になったが、山川は左ストレートやハイの連打で盛り返した。

判定は1~2Rに試合をリードした山川が2-0で勝利。誰よりも早くトーナメント準決勝へと駒を進めた山川は饒舌だった。「勢いに呑まれそうになる場面もあったけど、勝てて良かった。準決勝、決勝にも勝ってチャンピオンベルトを巻きたい」

お互いの意地とプライドが真っ向からぶつかり合う、メインイベントに相応しい一戦だった。北の大地にキックボクシングを根付かせた感のあるBOUT。次回BOUT 33は10月14日函館流通ホールでの開催を予定している。

セミ・ファイナル

▼RISE公式戦バンタム級3分3ラウンドEXR1R
・拓也(同級8位/蹴空ジム)
・樺島峻太(リアルディール)
勝者:拓也 判定3-0

今春、RISE WESTに乗り込んで格上の小崎貴誠を撃破した拓也が第3試合に登場し、小崎と同じリアルディールに所属する樺島峻太と対戦した。拓也がネックレスをとり忘れたまま一度は試合開始のゴングが打ち鳴らされるアクシデントがあったが、拓也は慌てず騒がず。

強烈なプレスとともにローの打ち合いに挑む。はるばる九州からやってきた応援団の声援を背に樺島はローキックや左クロスで揺さぶりをかけるが、試合の流れをつかみとるまでには至らない。手数では劣勢な感が否めなかった拓也がようやく重い腰を上げたのは1R終了間際。軽快な右ローと右ストレートを浴びせる。

2Rになると、拓也の攻撃はさらに加速。右ストレート、ボディアッパー。さらにワンツーからミドルを打ち込むと、樺島は初めて効いた素振りを見せた。飛びヒザやバックハンドは失敗したが、明らかに拓也のラウンドだ。3Rになっても、試合の流れは変わらない。樺島も必死に返していくが、スタミナは拓也の方が上。

最終Rになっても落ちないプレスとともに攻撃の手を休めず、そのまま試合終了のゴングを聞いた。千葉県出身でいまだ両親は同県の済む拓也はRISEの2度目の幕張メッセ大会開催と同大会への出場を熱望している。

第二試合

▼BOUTルール・フェザー級3分3ラウンド
・熊谷麻理奈(J-GIRLSフェザー級3位/WSR札幌)
・中川梨香(大成会館)
勝者:熊谷 判定3-0

5月12日、韓国で開催されたROAD FCでMMAデビューを果たした熊谷麻里奈が北海道に凱旋。本職のキックルールでの再起戦を飾った。青コーナーから登場したのは大阪からやってきた中川梨香。5月20日のホーストカップ名古屋大会では″タフガイ″溝口孝湖からパンチで2度ダウンを奪い、大差の判定勝ちを収めている期待の新鋭だ。

1R、試合を優勢に進めたのは中川の方だった。前蹴りをジャブ代わりに多用して熊谷の前進を封じたのだ。終盤、前蹴りの3連打で熊谷を前進を食い止めると、観客席から大きなどよめきが起こった。

2R、試合の流れを変えたい熊谷はワンツーからのローで中川を削りにかかる。その後もリーチの差を存分に活かしたワンツーで中川を懐に入らせない。終盤には痛烈な右ストレートをクリーンヒットさせ、中川をグラつかせた。

3Rになっても熊谷の勢いと止まらず、ワンツーや右ミドルでダメ押し3-0の判定で勝利を呼び込んだ。2Rになってから落ち着いて試合の流れを変えることができるだけのスキルを持ち合わせていたことが勝因か。

第一試合

▼RISE公式戦スーパーライト級3分3ラウンドEXR1R
・AKINORI(ライト級7位/蹴空ジム)
・吉田敢(BRING IT ONパラエストラAKK)
勝者:AKINORI KO 2R2’51

オープニングマッチにはかつて何度もBOUTでトリを飾っているAKINORIが登場し、札幌のベットタウンである江別出身で現在は東京を拠点に活動する吉田敢を迎え撃った。BRING IT ONパラエストラAKKに移籍。

心機一転巻き返しを計る吉田は1Rから前蹴りを中心にAKINORIに襲いかかる。いつになく好戦的で動きにもキレが感じられる。そんな吉田に対してAKINORIは1R後半から反撃を開始。得意のワンツーのボディフック。

左から右アッパーなどの連打で吉田を崩しにかかる。2Rになると、AKINORIはローキックを中心の手数でも吉田を上回るようになり、試合の主導権を握る。AKINORIの左ミドルキックで吉田は後退したり、ロープを背にするなど守勢に回る場面が目立ってきた。

クライマックスは3R。激しい打ち合いの中、AKINORIのラッシュはさらに加速。ワンツー、右アッパー、ボディフックと波状攻撃を浴びせ、吉田は窮地に追い込む。そして右で先制のダウンを奪う。こうなったら、試合の流れは動かない。AKINORIは左ミドルで追い打ちをかけながら、再び右で2度目のダウンを奪う。

なんとか立ち上がってきた吉田だったが、すでに青息吐息。最後は右から左のフォローされ、深々とキャンバスに沈んだ。復活の狼煙をあげたAKINORIは「使ってくれるなら、東京でも札幌でも構わない。とにかく強い奴はやりたい」と吠えた。

(TEXT:布施鋼治 ※札幌市出身)

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布施 鋼治

布施 鋼治

スポーツライター。1963年、札幌市出身。アマチュアレスリング、ムエタイ、MMAへの造詣が深く、雑誌「Sports Graphic Number」の連載、新聞への寄稿など幅広く執筆。「吉田沙保里119連勝の方程式」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。他の著書に「東京12チャンネル運動部の情熱」「なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨」等々、多数。
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