パンクラス札幌大会
2018年5月13日(日)札幌市・琴似コンカリーニョ
”世界標準”を掲げる日本MMA界の雄・PANCRASEの札幌大会。メインでは道内勢期待の後藤丈治(P’s LAB札幌)が、杉山廣平(SPLASH)のスリーパーにより1RTKO敗に散ったものの、堀米克弥(パラエストラ札幌)、立花恵介(スーパータイガージム田中塾※道内出身)らが圧巻の一撃KOを演出し、盛り上がりとしては一応の面目を保った形だ。以下に大会の模様をダイジェストでお届けする。
メインイベント
▼2018年ネオブラッドトーナメント一回戦
フライ級3分3ラウンド
後藤丈治(P’s LAB札幌)
杉山廣平(SPLASH)
※勝者:杉山 1R 2:42、TKO(RNC)
ケージ入場の前にボディチェックを受ける杉山。観客席に視線をうつし、自分の応援団がどこに座っているかを確認、軽く笑みを投げる。非常に落ち着いている様子だ。試合は後藤の左ミドルでスタート。このまま打撃でプレッシャーを与えたい。一方、杉山はこのミドル一発で警戒を強める。早めにグラウンドに持ち込まなければ危険だと判断したという。
再び後藤の左ミドル。入らせないためにフォローで前蹴り。杉山はその足をキャッチして、上にパンチのフェイント。後藤が反応した瞬間、ダブルレッグからテイクダウンを試みる。壁際で粘る後藤だがプレッシャーが厳しい。脇も差せない。そのまま尻餅をつくようにグラウンドへ。杉山はしっかりと頭をつけて片腕を制する。壁際で立たせないための行動が理路整然としていて非常にクレバー。このあたりはケージ常設ジムの強みだろう。
サイドに移行しながらパウンドを落とす杉山に、後藤はハーフで粘る。後藤が嫌がって身体を反転させたところで、杉山はパスしてバックへ移行。そのままガッチリと四の字フック。さらに片方の足の甲を後藤のヒザ裏にフックさせ下半身もコントロールする。
杉山はバックからの鉄槌、エルボー。後藤のアゴが浮くのを待って裸絞めへ。同時に足をほどき鼠径部へ移動させ、完全なバックマウントへ移行し、後藤の身体を伸ばしていく。20秒ほどバタバタともがいたところで後藤が落ち、レフェリーが試合をストップ。残り時間20秒だった。
セミファイナル
▼ストロー級3分3ラウンド
藤田成保(T-Pleasure)
平賀正孝(TEAM URESPA)
※勝者:藤田 3R 3:00、判定/3-0
1R、打撃で探り合う両者、打撃の平賀vs寝技の藤田といったコントラストが強く出るかと思ったが、意外に打撃でもプレッシャーをかける藤田。平賀も思い切りのいいバックブローを繰り出し譲らない。中盤、藤田はパンチにあわせてタックル。2度ほど仕掛けたが平賀は動じない。これは技術というよりもフィジカル・トレーニングの成果が出ているといった印象だ。互いに有効打がないままホーン。
2R、藤田が前に出る。パンチで攻め込んで、そのまま壁に押し込むように組む。すかさず切り返す平賀は太ももへ膝蹴り。ブレイク後、なおも前に出る藤田は、パンチからミドルの猛攻。バランスを崩した平賀に覆いかぶさるようにグラウンドへ。サイドをキープした藤田は鉄槌、エルボー。平賀は特に嫌がる様子もなく、エビから正面に戻しスタンドへ戻す。勝負に出る姿勢が見られたのは藤田。
3R、やはり先に前へ出るのは藤田。パンチで攻勢をかける。壁に押し付けると、グラウンドに持ち込むべく両足を取りにいく。平賀も粘り、30秒ほど攻防が続いたが、最後は藤田の我慢勝ちでグラウンドへ。倒れ際、平賀はギロチン。場内から「極めろ!」の声があがるも、極まりが浅い。頭が抜けて、藤田は上からパウンド。平賀は下から蹴りを織り交ぜて暴れる。平賀は勢い余って身体が回転してしまい、藤田にサイドポジションを献上してしまう。残り時間20秒。すぐに正面にもどし立ち上がった平賀が、バックブローからヒザ、パンチの猛攻を見せたところでホーン。判定は当然のように藤田。技術の差というよりも、勝負にでる姿勢・気持ちの差だった。
第三試合
▼バンタム級3分3ラウンド
堀米克弥(パラエストラ札幌)
久保田源三(SPLASH)
※勝者:堀米 1R 2:49、TKO(パンチ)
前回大会でプロデビューし、黒星がついた堀米。是が非でもプロ初勝利がほしい。対する久保田も3年ぶりの晴れ舞台を白星で飾りたい。前日計量ではテイクダウンの技術に注目して欲しいと話していた久保田。開始早々に蹴り足をキャッチしてテイクダウンを試みる。片手はついたものの踏みとどまる堀米。サイドから腰に巻きつく形で食い下がる久保田は、俵返しのような姿勢でしつこく攻める。なおも踏みとどまる堀米。正面に向き直り、久保田は高めの膝蹴り。これをキャッチした堀米は、そのまま持ち上げてテイクダウン。
カメの久保田に対しがぶる堀米。片足を立てて立ち上がりたい久保田に、堀米はさらにがぶる。カメから正面に戻した久保田が立ち上がり、四つで壁際の攻防。堀米の右手首を制する久保田。堀米はこの手首を解除すると、同じ手でショートアッパー。寸勁のようなノーモーションの一撃だった。前のめりに崩れ落ちる久保田をみて、レフェリーがすかさずストップ。堀米はケージにのぼり大喜び。嬉しい嬉しいプロ初勝利を挙げた。
第二試合
▼フライ級3分3ラウンド
黒石大資(スカーフィスト)
立花恵介(スーパータイガージム田中塾※道内出身)
※勝者:田中 1R 0:12、TKO(パンチ)
立花のジャブに対し、黒岩は内ももを合わせて探り合う。つぎの瞬間、黒岩の右ストレートに、立花がスリッピングしながら右ストレート一閃。垂直にストンと落ちる黒岩をみて、レフェリーは即ストップ。開始12秒で決着がついた一戦。道内出身の立花は5年ぶりの帰郷。応援に駆けつけたご両親に、リング上から手を振る姿が印象的だった。
第一試合
▼キャッチレスリングフェザー級3分2R EX1R
五ノ井武(DUROジム※函館出身)
山本敦章(パラエストラ千葉)
※勝者:五ノ井 EXR 3:00、判定/3-0
パンクラスの公式戦として組まれていたが、事情によりキャッチレスリングに変更となった一戦。打撃が排除されたことにより、試合がダレてしまうことが危惧されたが、予想はいい意味で裏切られた。試合は規定の2Rでは決着がつかず、延長戦にもつれ込む。が、両者の動きと展開にスピード感があり、まったく飽きさせない。非常に見応えのある一戦となった。試合は延長戦でギロチン、スリーパーで積極的に攻めた五ノ井に軍配。
オープニングファイト
▼エキシビジョンマッチ3分1ラウンド
武田光博(ベラトレオ函館)
アローイ石橋(パラエストラ札幌)
※エキシビジョンにつき勝敗はなし
入場時から金網に向かって走り、背中から金網に当たるという、プロレスラーさながらのパフォーマンスで会場を暖めるアローイ。さらに武田が入場すると、額を突合せて押し合いをするガチンコ・モードを全開に。これには前日から「ガチでいく」と宣言していた武田も、望むところといった表情でニヤリ。
打撃を排除したルールのため、試合展開に起伏がないのは致し方ない。が、膠着が長引くとアローイが武田の尻を張り手で叩くなどのアドリブ力を発揮。シーンと静まり返った場内に、尻を叩いたときの「パチーン」という音が響き、そのコントラストに会場は和やかな笑いに包まれた。
札幌大会ダイジェスト
▲PANCRASEの公式戦をはじめ、打撃系のビックイベントでもレフェリーを務める梅木よしのり氏。20年以上のレフェリング歴を誇るベテラン勢が、昼間のアマ大会「ケージファイト」からレフェリーを務めるのも札幌大会の特徴。レフェリングの技術を見るだけでも価値がある。
▲まだまだ歴史の浅いMMAというスポーツ。20年後には後遺症で悩まされる元選手が続出しているに違いない。札幌大会では昼間のアマ大会から国立大出身のドクターが常駐。選手の安全面に投資を惜しまないのも同大会の特徴だ。
▲セミファイナル前には、前日に開催されたROAD FC北京大会に参戦した熊谷麻理奈が帰国の挨拶。眼帯姿が痛々しい。まずはゆっくり休んでほしい。
▲ラウンドガールを務めたのはお馴染みの人気モデル・猪股聡子さん。最近はモデル業のほかに司会者としても定評がある。USTREAM大賞を受賞した人気番組『Step!Next』も健在。
▲メインで一本勝ちをした杉山廣平(SPLASH)。試合後に勝因はなにか?と尋ねると「家族をはじめ、大勢の応援団が札幌まで駆けつけてくれたこと」と嬉しそうに笑った。横では奥さん(お母さんかも)が安堵の表情。このあとジンギスカンを食べに行くとのことだった。
▲閉会式ではパンチでの一撃KOで会場を沸かせた堀米克弥(パラエストラ札幌)が挨拶。嬉しい嬉しいプロ初勝利を果たした喜びを爆発させた。苦労人の感動ファイトに観客は酔いしれた。
▲地元エースでありながら無念の一本負けを喫した後藤(中央)が閉会式にも出席。これはなかなか出来ない芸当だ。応援団からは「丈治弱すぎ!」「彼女が泣いてるぞ!」などの激励(?)の声が。ありきたりな慰めの言葉よりも、このほうが有り難かったに違いない。
写真提供:PANCRASE札幌大会事務局
photo & text:山田タカユキ

山田 タカユキ

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