パンクラス札幌大会 レビュー@布施鋼治

みなさんお待ちかね。札幌出身のスポーツライター・布施鋼治さんによる、10.22パンクラス札幌大会のレビューがパンクラス札幌大会実行委員会さんから届きました。早速お届けします!

メインイベント

▼PANCRASE公式戦ウェルター級 3分3R
赤沢幸典(Tristar Gym)
中村勇太(T-REX JIUJITSH ACADEMY)
※ノーコンテスト(赤沢幸典の計量超過の為)

メインを任された赤沢幸典だったが、水抜きに失敗して1.5㎏オーバーで計量を失格した。ただ、試合の方は中村勇太が承諾したため、試合開始直前には「中村が勝利した場合のみ公式記録として残り、引き分けあるいは赤沢が勝利した場合にはノーコンテスト」となる旨が場内に告げられた。

試合は赤沢のワンサイド。1R2分過ぎ、ガードをとろうとする中村に対して強烈なパウンドとヒジの雨あられ。中村の動きが止まったところで、レフェリーは試合を止めた。公式記録はノーコンテストとなったが、赤沢は試合を受けてくれた中村に感謝の気持ちを表した。

「試合を受けてくれたので、敬意を払わなければいけないと思いました」中村は柔術の黒帯だが、赤沢は負ける気はしなかったと言い切った。「今回は(所属するカナダのツイスタージムで)GSPら世界の名だたるグラップラーたちと練習していたので」さらにGSPがBJペンと闘った時に発した台詞を胸に赤沢はケージの中に入った。

「相手が柔術の黒帯だからといって怖がっていたらやられてしまう。テイクダウンして殴れば、相手は白帯になる」内容そのものは迫力があったが、勝ち名乗りのないメインはしまらなかった。次戦では汚名挽回なるか。

セミファイナル

▼PANCRASE公式戦ストロー級 3分3R
早坂優瑠(CORE QUEST KUSIRO)
平賀正孝(TEAM urespa)
※勝者:早坂 2R 1:27、腕十字固め

1R、現在は釧路を拠点に活動する早坂優瑠は右ミドルやインローをヒット。両足タックルでテイクダウンを奪うと、グラウンドでも試合を優位に進める。

2R、早坂は横四方から腕ひしぎ十字固めへ。これを平賀正孝が凌ぐと、クルリと腕ひしぎをかけなおして1分27秒、鮮やかな一本勝ちを収めた。

第三試合

▼PANCRASE公式戦フライ級 3分3R
後藤丈治(P´s Lab札幌)
桑原 悠(PUREBRED)
※勝者:後藤 3R 1:30、TKO(パンチ)

試合開始前からやる気満々の両者。アマチュア時代には堀口恭司と闘ったこともある桑原悠は再三組みに行くが、そのつど″北海道の次期エース″としての期待の大きい後藤丈治は相手のコンタクトを切って距離を保つ。

1R終了間際、後藤がパンチの連打を浴びせると、桑原は防戦一方に。2R、後藤はヒザ蹴りを効かせ、さらに右ストレートやインローで追い打ちをかける。桑原は組み付いての攻防を狙うが、後藤は相手の突進を切って打撃戦へ。

終了間際には再び連打をまとめて浴びせた。3Rになっても、試合の流れは変わらない。最後は後藤が右ストレートでダウンを奪うと、強烈なパウンドを連打してレフェリーストップを呼び込んだ。

試合後、後藤はタイで行った練習が活きたことを明かした。「タイのランバー(ソムデートM16)のジムに行って、相手のタックルを切る練習ばかりしてきました。これからはMMAに集中したい」

現在、後藤は北海道大学3年生。12月10日開催のパンクラス最後のディファ有明大会の出場も決定した中井祐樹の後輩はフライ級戦線の台風の目となるか。

第二試合

▼PANCRASE公式戦フライ級 3分3R
藤田成保(T-Pleasure)
竹内直矢(ベラトレオ函館)
※勝者:竹内 3R 3:00、判定/1-2

1Rから″津軽のベテラン″藤田成保は両足タックルで2度テイクダウンを奪う。しかし、今年5月の後藤丈治戦以来の実戦となる竹内直矢は背中をキャンバスにつけず、そのつど立ち上がる。

逆に下から腕ひしぎ十字固めを狙うなど、極めの強さを印象づけた。 2R、藤田の腰投げでトップを奪われると、自らケージ近くに移動して立ち上がる。再び藤田に抱え上げられてキャンバスに叩きつけられても、竹内は下から腕ひしぎ十字固めを仕掛け、ヒジ打ちで追い打ちをかける。

3Rも藤田がテイクダウンを奪うも、竹内が極めを狙う展開に。結局、ジャッジは2-1のスピリットで竹内の勝利を支持した。スコアの判断基準が割れた一戦だった。

第一試合

▼PANCRASE公式戦バンタム級 3分3R
堀米克弥(パラエストラ札幌)
山崎 宏(リバーサルジム東京スタンドアウト)
※勝者:山崎 3R 3:00、判定/0-3

1R開始早々、高木健太をセコンドに就けた山崎宏は左ストレートをヒットさせる。しかし、地元の友人・知人の声援を受けたパラエストラ札幌の堀米克弥は腰投げからバックマウントをとり、パウンドの連打から腕ひしぎ十字固めで反撃を開始。

その後も堀米は下からの極めを狙うが、山崎は鉄槌で反撃を試みた。2R、山崎は堀米をケージに押しつけてアッパーを連打。さらに腰投げからトップをとり、右のパンチを連打して試合を優位に進める。

3Rになっても、山崎の攻勢は止まらない。堀米のヒザ蹴りを被弾するも、そのままタックルを決めてテイクンダウン。すぐにマウントポジションをとってパウンドの連打を浴びせた。ジャッジは3者とも29-28で山崎の勝利を支持した。

筆:布施鋼冶 写真:山田タカユキ
写真提供:BOUT実行委員会

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布施 鋼治

スポーツライター。1963年、札幌市出身。アマチュアレスリング、ムエタイ、MMAへの造詣が深く、雑誌「Sports Graphic Number」の連載、新聞への寄稿など幅広く執筆。「吉田沙保里119連勝の方程式」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。他の著書に「東京12チャンネル運動部の情熱」「なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨」等々、多数。

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