BOUT-20:ISKA世界戦・TOMONORI vs シルヴァ

ノースエリア格闘技イベント BOUT20
2015年6月13日(土)札幌市・テイセンホール

 北海道初のキックボクシング世界タイトルマッチ開催が話題となった今大会。メインはISKA世界フライ級王座決定戦として、札幌出身のキック六冠王・TOMONORIと、英国のキック四冠王・ポール・ダ・シルヴァの現役王者対決。その他、永山敬之のムエタイ挑戦、AKINORIと石澤大介の裏メイン対決等、ファン垂涎カード続出のBOUT第20回大会。

メインイベント:ISKA世界フライ級王座決定戦3分5ラウンド
×TOMONORI(WBCムエタイ日本統一フライ級王者、WMCインターコンチネンタル・スーパーフライ級王者、UKF世界バンタム級王者/OGUNIGYM※札幌在住)
○“THE ROCK”ポール・ダ・シルヴァ(WPKL世界バンタム級王者、WMC欧州52kg級王者、IMKO欧州バンタム級級王者/イギリス※クリーリーマーシャルアーツアカデミー)
KO 3R1′32 ※シルヴァが新王者

 TOMONORIが、かねてから熱望していた札幌での世界戦。悲願の故郷での戴冠なるか?
 1R、ジャブとローキックで探りあいをする両者。シルヴァは相手の蹴りの強さに警戒を強めた様子。1分過ぎからシルヴァがカウンター狙い。TOMONORIの右ローに対して、蹴り足を掴んでのカウンターの右。独特の軌道。蹴りで圧力をかけるTOMONORI、下がりながらカウンター狙いのシルヴァ。
 2R、TOMONORI、ミドル増発。シルヴァのリターンも早い。シルヴァは執拗に左フックを狙う。TOMONORIも渾身の左フックで応える。1Rと打って変わってパンチの距離で前に出るシルヴァ。左フックのモーションから、時間差の右ストレートを決めると、TOMONORIは大の字ダウン。再開直後にゴング。
 3R、シルヴァは試合を終わらせる構え。パンチのモーションを見せるたびに場内に緊張が走る。TOMONORIはパンチに対してカウンターの飛びヒザ。直後にシルヴァの左フックがTOMONORIのテンプルを直撃。TOMONORIダウン。マットをつよく叩き、すぐに起き上がる。
 再開後、パンチ連打でロープに詰めるシルヴァ。TOMONORIはもう一度、飛びヒザを狙うが不発。なおもシルヴァの左フックがヒット。TOMONORIはカウンターの右ハイを抜群のタイミングで決めるが、シルヴァの圧力がつよく、押し倒されてしまう。
 シルヴァ、渾身の左フック、左ボディをヒット。倒れないTOMONORIは「もっと来い」のジェスチャー。しばし打ち合いをしたあと、ロープに詰めたシルヴァは左フック一閃。グラリとするTOMONORIは目の焦点が合っていない。追い討ちで左フックをテンプルに見舞うと、ゆっくりと崩れていくTOMONORI。立ち上がったが、足元がふらつくことを確認したレフェリーが試合をストップ。

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セミファイナル:日タイ国際戦ムエタイルール58kg契約3分5ラウンド
△永山 敬之(RISEフェザー級8位・士道館札幌道場)
△ナロンチャイ・ファンパサート(元ラジャダンナムスタジアムフライ級8位)
ドロー 判定1-0(ナロンチャイ)

 序盤からローを軸として積極的に攻める永山。仕上がりの良さをうかがわせる。ナロンチャイの”脅し”のミドルにも屈せず、リターンが早い。最初のクリンチから、早くもヒジをねらうナロンチャイ。永山は右ストレートと左フックでヒット・アンド・アウェイ。ナロンチャイは強引に近づき、ヒジを振り回す。組みヒザで、永山が横を向いた瞬間、後頭部へのヒジも。
 中盤になってもステップと手数が止まらない永山に対し、ナロンチャイはロープを背にして省エネ戦法。自分からは動かず、ヒジを狙っている様子。4Rにはいると、永山のパンチがヒットする場面が目立つ。特に右ストレート、左ボディがヒット。ナロンチャイは苦笑い。
 終盤、イラつくナロンチャイは、永山の蹴り足を掴んで、強引に転倒させる。組み付こうにも、永山のフットワークについていけず、逃げられてしまう。明らかにスタミナ切れのナロンチャイ。
 パンチを2,3発喰らって、ようやく組み付くことができるナロンチャイ。永山も首相撲になると、ブレイクを待つだけで動きがない。ムエタイルールといっても、だたのクリンチといった場面が多く、会場の盛り上がりも、いまひとつだった。

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RISE公式戦ライト級3分3ラウンド延長1ラウンド
○AKINORI(RISING ROOKIIES CUP2014ライト級優勝・蹴空ジム)
×石澤 大介(RISEスーパーフェザー級6位・パラエストラ札幌)
判定3-0

 昨年のBOUT16に続き行われた、キック対MMAの打撃対決第二章。前回はMMA側が勝利。AKINORIは雪辱を果たせるか?
 試合は1Rからヒートアップ。AKINORIはパンチと右ローを軸に、空手でいう内回し蹴り、ヴァレリーキックといった変則蹴りも使用。石澤も手数が多彩で負けていないが、出鼻を前蹴りで潰される場面が目立つ。終盤、石澤の殺人左フックがヒット。AKINORIはポーカーフェイス。
 2R、AKINORIは、石澤の右ローにあわせてカウンターの右ロー。石澤はロープまで2~3メートルほど吹っ飛ぶ。お返しとばかりに、石澤の豪腕が火を噴き、両者、譲る気配なし。中盤には石澤の左腿が真っ赤に変色。予想外にAKINORIが前に出て、石澤が下がる展開となる。石澤がヒザブロックを使うのは珍しい。終盤は石澤が反撃。フックを立て続けにヒットさせると、伝家の宝刀・ハイキックを繰り出す。惜しい当たりだった。
 3R、得意の右ローを増発するAKINORI。続いてパンチからハイキックと手数が止まらない。石澤も手を出すが、後退しながらゆえに説得力がない。ゴング直前、AKINORIはお株を奪うハイキックで、石澤が大きく体勢を崩す。終盤にかけてのAKINORIの詰めはさすが。石澤にほぼなにもさせなかった。

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キックボクシングルール70キロ契約3分3ラウンド
○バッカシット・ウィラサクレック(ウィラサクレック札幌)
×長谷川 豊(KFG URAWA※札幌出身)
KO1R2′47

 ウィラサクレック札幌ジムの門番・バッカシットがベールを脱ぐ。対するは、MMAの野獣・夜獅鬼をミドルキックで一蹴した長谷川豊。長谷川得意のラフファイトで、ムエタイのリズムを崩せば勝機ありと関係者は予想していたが、試合はバッカシットの横綱相撲だった。
 開始早々にバッカシットの右ローがクリーンヒット。長谷川の脚が大きく飛ばされる。「これで勝負あり」と誰もが納得する会心の一撃。弱気になった長谷川の表情をみて、なんともいえない安堵の表情をみせるバッカシット。
 以後もバッカシットのローキック攻めが続く。喰らった長谷川の身体が、半回転してマットに叩きつけられるほどの破壊力。ヒザブロックした長谷川の脚には、すぐさまテニスボール大のコブができた。右ローを15発被弾したところで最初のダウン。再開後、一発被弾して、またダウン。試合はストップした。

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RISE公式戦ライト級3分3ラウンド
×獅・センチャイジム(センチャイムエタイジム)
○吉田 敢(ゴールデングローブジム※恵庭出身)
判定2-0

 藤原ジム改め、ゴールデングローブジム所属の吉田は北海道恵庭市出身。セコンドにはIT’S SHOWTIME世界61kg級チャンピオン・山本真弘。
 1R、お互いにパンチで真っ向勝負。獅得意のサウスポーからの左ストレートをうまくかわす吉田。目がいい。地元での初ファイトに気合が入る吉田は、組み際や離れ際にも、細心の注意を払って試合を進める。
 2R、クリンチになっても、お互いすぐに離れるキレイな試合。獅がカウンターのヒザorミドルを狙うが、吉田のスピードに出遅れてしまう場面がでてきた。終盤に吉田の右ストレートで、大きくのけぞる獅。
 3R、吉田が前に出て、獅が下がる展開。効いていなくても、後ろにのけぞってしまう獅は印象が悪い。ラスト30秒の打ち合いも、吉田がロープに詰める。吉田の気迫が前面に出た好ファイトだった。

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RISE公式戦フェザー級3分3ラウンド
○出口 智也(忠和會)
×永井 健太郎(KICK BOX)
判定3-0

 プロ転向後、負けなしのレコードを誇る出口が、連勝記録を伸ばすか?対するは東京の名伯楽・鴇稔彦氏が送り込む若武者・永井健太郎。
 1R、開始早々から出口は得意の左右フックの乱れ打ち。これまでの出口の相手は、これで戸惑いの表情を見せたが、永井は腹が据わっているらしく、まったく動じない。永井は、腹についた脂肪からは想像できないコンビネーションのよさを見せる。距離感の噛み合った打ち合い。
 2R、出口は左右のパンチと右ロー、永井は左右のパンチからミドル、ハイ。お互いに譲らぬスピーディーな展開。段落の終わりに決まる永井のハイは印象がいい。中盤、出口はパンチとヒザを永井のボディへ集中。後半にどう響くか。
 3R、永井のスピードが鈍る。パンチを打ち返そうとしても、出口はもうそこにはいない。中盤、出口の右フックにグラつく永井。一気に畳みかける出口。盛り返すべく、最後まで攻め続けた永井だったが、力及ばず、判定は出口。

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SB公式戦エキスパート特別ルール・スーパーウェルター級3分3ラウンド
×ほそえ としひろ(志真会館)
○アローイ石橋(パラエストラ札幌)
判定2-1

 北海道ではBOUTでしかお目にかかれない、シュートボクシング公式戦。今回は、パラエストラ札幌のベテラン・アローイ石橋が参戦。大阪・志真会館のほそえとの一騎打ち。
 1R、石橋の変則的な構えに、戸惑いの表情をみせるほそえ。パンチで攻め込むほそえに対し、石橋はマンソン・ギブソンばりの抱え上げてからの投げ。打ち合いたいほそえに対し、変則的なリズムを崩さない石橋。噛み合わない二人。
 2R、強引に打ち合いに持ち込むほそえ。石橋は頑なに付き合わない。石橋は隙をみてマンソン投げ、蹴り脚を掴んでのこかし。ほそえは前進のギアしかなく、パターンが単調。石橋はやりやすそう。
 3R、パンチ一辺倒だったほそえが、腰投げも狙うが不発。石橋がタックルに来た瞬間にギロチンチョークも狙うが不発。石橋は、のらりくらり下がりながら、適所で右ストレート&ローキック。ほそえの悲壮感と石橋の楽天さが絡み合った、オモチャ箱的な一戦。
 判定は1-1で分かれたあと、最後の一人が石橋を支持。お祭り騒ぎのアローイ応援団。

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REBELS公式戦55kg契約3分3ラウンド
△中澤 弘志(スクランブル渋谷※札幌出身)
△充志(RIKIX)
引き分け 1-1

 BOUT18で北海道初上陸を果たした新興団体「REBELS」が再上陸。前回に続き、札幌出身の中澤弘志が、東京はRIKIX所属の充志を迎え撃った。充志のセコンドには”リングの赤い薔薇”こと小野寺力氏。中澤のセコンドには元WPMF世界ライト級王者・増田博正氏と豪華なセコンド陣。
 1R、修行僧的な雰囲気を醸し出す充志は、気合のはいったローキック。やや呑まれた感のある中澤は、真っ向からの打ち合いを避ける。前に出る充志は、迷いがない様子。
 2R、手数とクリーンヒットにおいて互角。ただ、倒しにいく姿勢が見られる充志に対し、中沢にはそれがない。経験の差でお茶を濁しているようにも映る中澤。
 3R、セコンドからの激が飛び、パンチで猛然と前に出る中澤。充志の連打とも噛み合い、素晴らしい打撃戦に発展。第一試合だけに、1Rからこれが見たかった。両者譲らず、判定はドロー。

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他の試合結果は以下の通り。

オープニングファイト・RISE公式戦64kg契約3分3ラウンド
△GO(蹴空ジム)
△飯塚 祐己(KFG URAWA)
引き分け 1-0(GO)

オープニングファイト・RISE公式戦フェザー級3分3ラウンド
○畑中 健太(蹴空ジム)
×千羽 裕樹(スクランブル渋谷)
判定3-0

オープニングファイト・RISE公式戦56kg契約3分3ラウンド
○拓也(蹴空ジム)
×平田“パラケート”修(TRY-EX)
判定3-0

写真提供:BOUT実行委員会
photo & text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。