BOUT-27 レビュー@布施鋼治

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みなさんお待ちかね。札幌出身のスポーツライター・布施鋼治さんによるBOUT-27のレビューが、BOUT実行委員会さんから届きました。早速お届けします!

筆:布施鋼冶 写真:長尾廸

布施鋼冶のBOUTレビュー

全体のリード

北海道でコンスタントに大会を開く立ち技格闘技イベント「BOUT」が2年ぶりのビッグマッチ! 6月11日、新札幌のホテルエミシア3Fパレスホールで「BOUT27」を開催し、800名という超満員札止め(主催者発表)の大観衆を集めた。

関係者によると、有料入場者数ではBOUT史上最多の観客動員だったという。マッチメークもオープニングファイトから道外の選手も多数出場し、熱戦を繰り広げた。次回大会は9月3日、BOUTの常打ち会場であるコンカリーニョで行なわれる予定だ。

TOMONORI vs ジェイズ

大会2日前、父親と一緒に来日したエヴァン・ジェイズ。来日した時点で約5㎏も体重をオーバーしていたので、懸命に減量にトライしたが、前日計量でも2・7㎏オーバーとなり、再計量に。

しかしながら規定の3時間以内に体重を落とすことができずに失格となった。ジェイズは弱冠17歳ながら、大会前筆者のもとにアメリカから「ジェイズの試合のインターネット放送はあるのか」という問い合わせがあるほど期待されているホープだったが、体調管理の甘さはプロ失格といわざるをえない。

結局、ISKA本部の通達によって、計量にクリアしたTOMONORIが勝利した場合のみISKA世界ムエタイフライ級王者として認定されるという一戦として争われることになった。さらに通常ならばジェイズに減点やグローブハンディが与えられるはずだったが、TOMONORIがそれを望まなかったのでハンディは一切なしで行なわれることになった。

5Rマッチらしく、1Rは静かな立ち上がりに。お互い相手の出方をうかがうかのように探り合う。ジェイズが右ミドルを打てば、TOMONORIは左ローを返す。逆にTOMONORIが左ミドルを放てば、即座にジェイズが右ミドルを返す。そうした中、セコンドからの「スピード!」という指示を背に、いきなり強いミドルを打つなど緩急をつけた攻撃でTOMONORIがいい流れを作る。

2Rになるとそれまでの悪い流れを断ち切るかのように、ジェイズがワンツーやローの連打で逆襲に転じる。TOMONORIが攻撃を加えようとすると、ジェイズは相手の打ち終わりにカウンターを狙う。年齢とは裏腹にこのイギリス人キックボクサーは老獪なスキルを持ち合わせていた。

続く3Rはジェイズが完全にペースを握った。手数が減ったTOMONORIにセコンドからは「動いて。狙わないで手を出していこう」という指示が飛んだ。均衡が破れたのは4R。ロープを背に闘うことが多くなったジェイズに対して、TOMONORIは右フックから左ストレートをクリーンヒット。さらに左のカウンターで追い打ちをかけ、飛びヒザ蹴りでプレッシャーをかけた。

TOMONORIが左の連打を打ち込むと、ジェイズの顔が歪んだ。劣勢に立たされても、このイギリス人ファイターの姿勢は変わらない。ロープ際を定位置とするジェイズのディフェンス重視の作戦に業を煮やしたTOMONORIがリング中央に出てこいよと促す場面もあった。

5Rになっても、ジェイズはロープを背にTOMONORIの打ち終わりを狙って右ミドルを狙う。確かにジェイズの蹴りの精度は高かったが、ダメージを与えるまでには至っていない。そんなジェイズのリズムにTOMONORIも付き合わされたので、中盤にはレフェリーから「お互いもっとアグレッシブに闘うように」と注意を促された。

クリーンヒットという点ではジェイズに分がある攻防もあったが、最も採点されやすいダメージという部分ではTOMONORIが優勢だったといわざるえない。窮地に立たされても省エネ戦法に徹するイギリス人にTOMONORIはメリハリのついた右ミドルやパンチの4連打を決めて勝負を決定づけた。

スコアは49-46、48-47、49-46のユナニマス・デシジョンでTOMONORI。北海道のキックボクシング界のオピニオンリーダーは2年前にとり損ねたISKA世界王座のチャンピオンベルトをようやく腰に巻いた。

那須川 vs 山川

この大会で最も会場を沸かせたのは、メイン前にスーパーエキシビションマッチに登場した那須川天心だった。RIZINが北海道の地上波(UHB)でも放送されているせいだろうか、花道に登場しただけでも超満員の観客からは大きな声援が飛んだ。

本来ならば対戦相手である札幌在住の山川賢成の方に声援が集中するはずだが、那須川は”時の人”の貫祿でアウェーの空気を吹き飛ばした。那須川がRISEバンタム級王者ならば、山川が同級のランカーという関係があったせいだろうか。試合開始のゴングがなると、お互いエキシビョンマッチ(模範試合)という形式を忘れるかのように激しくやり合う。

天心がノーモーションで右ハイを打つと、場内からは「オーッ!」という大きなどよめきが起こる。その後、那須川は何度観客をどよめかせたことか。クルリと回っての二段蹴り、パンチの3連打打ってからの後ろ回し蹴り、そしてとどめはカポエラキック!

序盤こそ那須川の攻撃に合わせてきちんと反撃していた山川だったが、1R終盤には右目に思い切り攻撃を食らって一瞬苦悶の表情を浮かべた。2Rになっても”天心劇場”は続く。山川も軸足払いで那須川からスリップダウンを奪い一矢を報いたが、那須川が浴びせ蹴りでまさかのダウンを奪った瞬間場内はこの日のMAXともいえる大歓声に包まれた。

試合後、マイクを握った那須川は「山川選手は強かったので僕を気を抜かないでやろうと思いましたと切り出した。「それに山川選手は僕のベルトを狙ってくると思うので、ここでしっかりと差をつけないといけないと思いながら闘っていました」

対照的に山川は「期待してくれた方々にいいところを見せられなくてすいません」とションボリ。しかしながら、山川にとっては世界の天心の強さを体感できただけでも大きな収穫だったのではないだろうか。

AKINORI vs 緒方

今年1月、RISE115でキャリアに勝る藤田智也から先制のダウンを奪われながらも延長戦の末に白星をGETしたAKINORIが”闘うシングルファーザー”緒方惇と対戦した。

このマッチメークは過去BOUTが二度組もうとしていずれもケガで流れているという因縁の一戦だったが、試合開始のゴングが鳴ると打ち合いになるまでに時間はかからなかった。緒方がワンツーを繰り出せば、AKINORIはローで応戦する。

そうした流れの中、AKINORIと右ストレート一閃! この一撃で緒方はストンと腰を落すようにダウンを喫した。この時点で緒方の目は意識を失ったかのように開いていたので、レフェリーは即座に試合を止めた。

7月16日、大阪で開催のDEEP KICKでは山口裕人が返上したDEEPKICK63㎏級王座決定トーナメント一回戦で西岡蓮太と対戦することが決定しているAKINORI。東京に続いて大阪でも確かな一歩を踏み出すか。

出口 vs 津田

北海道釧路市を拠点に活動するRISEバンタム級8位の出口智也にRISE同級10位の津田鉄平が挑んだランキング戦。1Rは中盤まで出口がパンチの連打とローで試合を優勢に進める展開に。しかしながら終盤には逆に津田が盛り返し、出口が下がるシーソーゲームに。

2Rになると津田は距離を狭め、カウンターのヒザ蹴りや左のボディフックなど、ボディに攻撃を集中させる。劣勢に追いやられた出口は組み付きが多くなり、レフェリーから注意を受ける場面も。

それでも、3Rになると地元の応援を背に受けた出口は息を吹き返す。津田のお株を奪うようなヒザ蹴りの連打で挽回する。その後津田もヒザで応戦する攻防を繰り広げたが、ジャッジは2-0で出口の勝利を支持した。

パッカシット vs 久保

ムエタイルールだけではなく、MMAにも緒戦するWSR札幌の門番パッカシット・ウィラサクレックが登場。PHOENIXの久保政哉を迎え撃った。今年4月29日、久保はMAのリングで大阪在住のタイ人に破れている。行かなければいけない時に動けず、手痛い黒星を喫してしまったのだ。

その反省を糧に久保は1Rから相手に合わさず自分からどんどん攻撃を仕掛けていく。ペースを乱されかけたパッカシットはまるで合気道の達人のような鮮やかな軸足払いで立て続けにスリップダウンを奪い、久保の好きなようにはさせない。

勝負が動いたのは2R。接近戦を挑んできた久保に対してパッカシットはカウンターのヒザ蹴り。さらに右ヒジ打ちでムエタイの洗礼を浴びせる。そうした最中、このタイ人のショートの右ヒジが久保の顔面をとらえると久保は白目を向いてダウンを喫してしまった。

その後必死に追い上げをはかる久保だったが、パッカシットはこれを3Rには6度に渡る軸足払いで止め、3-0の判定勝ちを飾った。

拓也 vs 亜月

22歳VS19歳。BOUT VS シュートボクシングのホープ対決はBOUTの拓也が制した。自分の試合が終えたばかりの未奈から「秀晃道場は強いんだぞ」とゲキを飛ばされた亜月は不気味な笑みからローを繰り出したかと思えば、タイミングのいい前蹴りで拓也のアゴを再三上げる。

余裕とセンスを感じさせる攻撃だったが、拓也も怯まない。後半になるとワンツーや得意のボディフックで盛り返す。 2Rもシーソーゲームが続いたが、中盤から亜月の動きに疲れが見え始め、ロープを背負う展開が多くなってきた。拓也に右フックをヒットされると、マウスピースが落ちる。チャンスとばかりに拓也は右のカウンターのヒザ蹴りで追い打ちをかけた。

続く3R、セコンドに就いた未奈の「やられたらやり返せ」というゲキも虚しく、拓也に連打を決められると亜月は相手に背中を見せてしまい、スタンディングダウンを宣告された。判定は文句なしに3-0で拓也。今年に入ってから拓也は連敗中だったが、ようやく息を吹き返した。

熊谷 vs 未奈

札幌VS仙台の美女格闘家対決はキャリアに勝る未奈が制した。リングの中央を陣取り、長身を活かして上から覆いかぶさるような動きで熊谷麻理奈はプレッシャーをかけるが、未奈は動じない。

熊谷を巧みにコーナーに押し込むやお株を奪うようなヒザ蹴りを見せたかと思えば、パンチの連打で試合の主導権を握る。なんとか反撃に転じたい熊谷が右ローをスマッシュヒットさせたが、未奈の顔色は変わらない。

2Rになると未奈は右フックの猛攻で熊谷をグラつかせる。劣勢に立たされた熊谷が食らいついていこうとすると、パンチの連打で突き放す。3R、もうあとがない熊谷はパンチの打ち合いに出ると、未奈は鼻から出血するが、それ以上の反撃は許さず3-0の判定勝ちを収めた。

次戦は7月7日のGirls-Scup。熊谷に勝った勢いで、久しぶりのホームでも存在感を示せるか。

北濱 vs 秀樹

1R開始早々、サウスポーの秀樹は北濱精悦の蹴り終わりに右を合わせる。さらにボディフック、左ハイで追い打ちをかける。プロデビュー戦に続いてBOUTのリングに上がった北濱は右インローを返すのが精一杯。

秀樹の痛烈な右フックを食らうと崩れ落ちるようにダウン。両ヒザをついたままファイティングポーズをとった時点で、レフェリーが試合を止めた。復帰後、秀樹は2連勝をマークした。

大地 vs 前田

身長では地元蹴空ジムの大地の方が12㎝も高かったが、キャリアは前田将貴の方が遥かに上。その差を見せつけるかのように、前田が身長差をものともせず、ミドルキックで自分のリズムを掴む。

そして2R、右フックで先制のダウンを奪う。なんとか立ち上がった大地だったが、前田の勢いは止まらない。その後も立て続けにパンチの連打で2度ダウンを奪って会心のKO勝利を収めた。

筆:布施鋼冶 写真:長尾廸
写真提供:BOUT実行委員会

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布施 鋼治

布施 鋼治

スポーツライター。1963年、札幌市出身。アマチュアレスリング、ムエタイ、MMAへの造詣が深く、雑誌「Sports Graphic Number」の連載、新聞への寄稿など幅広く執筆。「吉田沙保里119連勝の方程式」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。他の著書に「東京12チャンネル運動部の情熱」「なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨」等々、多数。
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