BOUT-27:前日計量の舞台裏(ISKA世界戦編)

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計量会場に到着すると、BOUT実行委員会の担当者が頭をかかえていた。なんでも、エヴァン・ジェイズが5kgオーバーの状態で日本に到着したのだという。試合の2日前であるにもかかわらずだ・・・・・。

エヴァン・ジェイズの消極ファイトによって、BOUT史にのこる大凡戦となったBOUT-27・ISKA世界ムエタイフライ級王座決定戦。今回は試合前のアップロードがボツとなった、問題の前日計量の模様をお届けしたい。

先に計量会場へ到着したのはTOMONORI陣営だ。ジムでみせる屈託のない笑顔のTOMONORI。それでいて決戦前の尖るようなオーラが同居しており、調整具合の良さを感じさせた。

▲先着したTOMONORI。視線がしっかり定まり迷いがない。

一方、間もなく到着したエヴァン・ジェイズ陣営は非常にナーバス。セコンドとして帯同しているのは父親だそうだが、罪を犯した息子が引受人の父親と一緒に留置所から出てきた、そんな感じの重苦しさだ。

真っ先に歩みより握手を求めるTOMONORI。この辺の駆け引きもさすが。握手にこたえるエヴァンは、極端な猫背なせいもあって消極的な印象。視線をあわせることもできなかった。ファーストコンタクトは完全にTOMONORIのオーラ勝ちといったところだ。

▲非常にナーバスな表情のエヴァン・ジェイズ。覇気がなかった。

帯同していたエヴァン・ジェイズの父親は、英国で大人気の打撃系イベント「MuayThai GrandPrix」を主催する大物プロモーターだという。エヴァンは生まれながらにして格闘家の道を歩んできたムエタイ・エリートというわけだ。

実際、エヴァンをネットで検索するとポジティブな記事や画像が山ほど出てくる。さぞかし前途洋々で希望に満ちあふれた自信家なのかと思いきや、目の前にいるのは情緒不安定なニートといった印象の少年だ。本当にあの世界ランカー、エヴァン・ジェイズなのかと我が目を疑った。

5kgオーバーのサプライズ到着から一夜明けた計量当日。早朝からサウナスーツを着込んで縄とびに励んだというエヴァンだったが、この様子では体重を落としきれなかったのではないかと推測した。

▲彫刻のような美しい肉体を披露したTOMONORI。

計量開始は11時。先に体重計に乗ったのはTOMONORIだ。上の画像のように肌ツヤもよく、万全の仕上がり具合。一方のエヴァン・ジェイズは、なんと2.7kgオーバー。これにはさすがのTOMONORIも「キツイっすね・・・」と、呆れ顔。

結局、ISKAの規定では3時間の猶予が与えられるため、一旦解散したのち、3時間後にもう一度計量が行われることとなった。エヴァンはその3時間を必死に動き、体重を落とさなければならないわけだ。

TOMONORIはといえば、怒りを表すこともなく淡々とした表情。「禅さん、ツーショット写真が必要でしょ?先に撮っておく?」と、こちらを気づかう姿勢まで見せてくれた。

さらには「唇がカサカサだから、無理をしたら倒れるぞ。少し水分を取ってから動いたほうがいい」とエヴァンを気づかうTOMONORI。エヴァンは「うんうん」と力なくうなずき会場を後にした。

▲体重計に乗るエヴァン。もう少し絞れるようにみえたが・・・・。

さて、エヴァンが会場を後にして数十分後、ここでも彼の奇行を目の当たりにする。なんとエヴァンは自身のSNSで「契約体重を守れなかった」と全世界に発信したのである。与えられた3時間を満たしていないにも関わらずだ。

規定の3時間で必死に体重をおとす努力もしなかったエヴァン。彼には体重を落とす気などサラサラなかったのだろうか。契約体重を守れなかった場合のペナルティ意識が希薄な外国人ファイターらしいといえばらしいが、あまりにもBOUT実行委員会とTOMONORIをバカにしている。

この時点でエヴァンに闘争心はなく、明日に控えた王座決定戦が凡戦におわる可能性も十分に考えられたわけだが、それを試合前の段階で記事にするのは芸がない。予定を変えてアンダーカードのみの計量レポートをお届けすることになったのは、そういった事情があったわけだ。

▲死んだ魚のような目で撮影に応えるエヴァン。対照的な両者

当日の世界戦がエヴァンの消極ファイトによって、大凡戦におわったことはすでにお伝えしたとおりだ。筆者が推測するに、百戦練磨のTOMONORIならば前日のエヴァンの様子をみた時点で、彼が消極ファイトに走るであろうことを予想していたに違いない。

札幌のファンに知っておいてほしいのはTOMONORIが、エヴァンが消極ファイトに徹した場合にどのようにして試合を盛り上げるか、その点に苦心しながら世界戦を戦っていたという事実である。しかし、相手にやる気が無ければそれまでの話だ。その意味ではTOMONORIも被害者の一人だといわざるを得ない。

札幌で産声をあげた格闘技イベントで、札幌出身のファイターが世界タイトルを獲得する。この試合は札幌のファン、なかでもBOUTを第1回大会から観戦しつづけているファンにとっては特別な意味をもった試合だったと思う。

TOMONORIには納得の試合内容でベルトを獲ってほしかった。外国人ファイターであるエヴァンにその気持ちをわかれとは言わないが、いくらなんでも露骨すぎる”安全運転”であった。彼は長いBOUTの歴史のなかでも”A級戦犯”として語り継がれていくに違いない。

写真提供:BOUT実行委員会
photo & text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。愛読書はさいとうたかおの「鬼平犯科帳」。
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