BOUT-26:山川、会心のKO勝利。後藤は出口から大金星

ノースエリア格闘技イベント BOUT-26
2017年3月26日(日)札幌市・琴似コンカリーニョ

ひさびさに見応えのある興行だった、と言ったら怒られるだろうか。

チケットは発売と同時に完売したうえに、当日には急遽、立見席のチケットを追加販売するという異例の事態となった今大会は、その期待を裏切らない好ファイトが続出した。

メインでは山川賢誠(札幌道場)が拓也(蹴空ジム)を相手に横綱相撲を展開。昨年6月以来となる会心のKO勝利で、5月に予定されている上位ランカーとの決戦に弾みをつけた。

また、キックデビュー2戦目にして、”道内フェザー級最強”の称号を持つ出口智也(忠和會)に挑んだ後藤丈治(P´sLAB札幌)は、大方の予想を覆えす大金星。その存在を強くアピールした。

その他、TOMONORIのISKA世界戦の発表、北濱精悦・米沢知佐といった元・極真世界王者の襲来も話題を呼んだ今大会をダイジェストで振り返る。

第一試合

▼RISE公式戦59kg契約3分3ラウンド
熊谷麻理奈(全日本ボクシング選手権2012準優勝・WSR札幌)
米沢知佐(第6回極真会館世界大会優勝・TeamFreeStyle)
勝者熊谷:判定3-0

計量時から、熊谷の長い脚に的をしぼっていた米沢。世界を制した必殺ローキックを見舞いたかったが、リーチ差を克服することはできなかった。

1R、意外にも蹴りを多用した熊谷。ミドルに加えて、米沢のお株を奪うローキックもヒットさせる。

攻撃した後、その場に止まることなく動き続けた熊谷。これをされたら米沢はなす術がない。米沢が繰り出す攻撃はことごとく空をきった。

熊谷は終盤になってもダイナミックなミドルを多用。”キックボクサー・麻理奈”を強く印象付けた。文句なしの完封勝ち。

第二試合

▼RISE公式戦スーパーライト級3分3ラウンド
大地(蹴空ジム)
北濱精悦(極真会館連合会第2回世界大会優勝・TARGETSHIBUYA)
ドロー判定1-0(大地)

早いラウンドでの大地のKO勝ちを予想していたが、見事にはずれた。

1R、北濱はインロー。大地はミドルと膝蹴りで応戦。大地の攻撃に早くも腰が引けている北濱。大地の長身から繰り出される攻撃に苦しんでいる様子だ。

2R、コンスタントに当て続けた北濱のインローで、大地の内ももが真っ赤に変色。徐々に大地が後退する場面もでてくる。しかし、ここまでは大地のラウンド。

3R、セコンドについたDyki会長から激が飛び、覚醒した北濱。”怒涛”と形容するにふさわしい猛ラッシュを見せる。

「今大会のベスト・バウトですね(某関係者)」と言わしめた猛ラッシュに、元・極真世界王者の底力をみた。判定はドロー。

第三試合

▼BOUTkickboxingルール53kg契約3分3ラウンド
がんばれ!ふるかわくん(Grabs)
山田忠洋(WSR札幌)
勝者山田:判定2-0

WSR札幌の秘蔵っ子・山田忠洋と、GRABSの”夢芝居”ふるかわくんが三度目の対決。過去二戦はすべてふるかわくんが勝利している。

1Rから脚に故障を抱えているような素振りの山田。なにが起こったのか?ローキックを軸に攻めるふるかわくんが優勢。

2R、トリッキーな動きを織り交ぜ、圧力を強めるふるかわくん。前回はこの攻撃に後退を余儀なくされた山田だったが、今回は前蹴りを合わせてコンビネーションを完結させない。徐々に山田ペースへ傾く。

3R、ポイントイーブンとみたのか、両選手ともに気持ちを全面にだした好ファイトを展開。足を止めての乱打戦も。山田が前回ダウンを喫した前蹴りを被弾するも、気持ちで押しきった。ふるかわくんから悲願の初白星。

第四試合

▼RISE公式戦57kg契約3分3ラウンド
出口智也(RISEバンタム級7位・釧路忠和會)
後藤丈治(P´sLAB札幌)
勝者後藤:判定3-0

「丈治が得意なのはフックなんですよ。でもね、出口君とやるなら左ストレートで行けと教えたんです」

そう語るのは、今回セコンドについた林ボクシング・ジム(札幌市・白石区)の林会長だ。

体軸の強さでひけをとらない後藤は、出口の圧力をしっかりと受け止め、アドバイス通りに左ストレートのカウンターで切り返した。1R、左ストレートを被弾した出口は大きくバランスを崩す。

2R以降もミドルと前蹴りでアウトボクシングに徹する後藤。ミドルを蹴った後に、反対の脚で前蹴りをフォローするというのはデビュー2戦目のルーキーとは思えない動きだ。

そして、出口が焦って前に出るのを待って、ふたたび左のストレートをカウンター。憎らしいばかりのアウトボクシングだった。

終盤、出口お得意のバックブローで”ヒヤリ”とする場面があったが、それ以外は完封したといっていい内容。

「一日中、出口さんのことを考えてる毎日だった」

と語った後藤。見事に大金星を挙げた。

セミ・ファイナル

▼BOUTkickboxingルール67kg契約3分3ラウンド(肘有)
TETSURO(NJKFウェルター級4・Grabs)
CAZJANJIRA(蹴拳ウェルター級チャンピオン・JANJIRAGYM)
勝者caz:判定2-0

2015年に行われたBOUT-ZERO 5以来の再戦となる両者。肘打ちありのルールで行われたこの試合、1RからJANJIRAの肘で顔を腫らすTETSURO。

首相撲の制限がないこともプラスに働き、上手く距離を制したJANJIRAはクリーンヒットを許さない。TETSUROも負けじと肘で応戦するが、膠着戦の展開ではJANJIRAに一日の長がある。

離れてはミドル、くっついては肘・膝と、距離にメリハリをつけるJANJIRAは、けっしてTETSUROの距離では戦わない。前回対戦の教訓を生かしているという点では、JANJIRA陣営に創意工夫がみられた一戦。

TETSUROの強打が不発のまま、終了のゴングを聞いた。

メイン・イベント

▼RISEランキング戦バンタム級3分3ラウンドEXR1R
山川賢誠(RISEバンタム級9位・札幌道場)
拓也(RisingRookiesCup2016バンタム級優勝・蹴空ジム)
勝者山川:KO2R1′58

メインまでの試合がKO決着はもちろん、ダウンすらないという状況で、この男がイベントを締めてくれた。

1R。格下ランカーとの対戦を「遠回りでしかない」ときって捨てた山川だったが、拓也の猛攻に得意の右フックのタイミングを測りかねている様子。セコンドの指示にもなかなか応えられない。

試合が動いたのは2R。1Rとはうって変わって激しい前進をみせる山川は、打ち合いに応じた拓也に右のフックを合わせて最初のダウンを奪う。

「右のフックから入っちゃダメなんだよね。拓也くんには左ストレートから入って、右のフックじゃないと」

そう指示を出したのは、前出の林会長である。ふらつきを悟られまいと慎重に立ち上がる拓也だったが、無情にも時間は一分以上残っていた。

山川がダウンを奪った場合、そのラウンド内に相手を仕留める確率は、筆者が知る限り100%である。再開後、立て続けに二度のダウンを奪ったところで、レフェリーは試合終了を宣言した。

写真提供:BOUT実行委員会
photo & text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。