道内MMA界の新星・後藤丈治を読む | P’s LAB札幌,・後藤丈治さん

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キックボクシング参戦二戦目にして、道内フェザー級最強の出口智也から金星を挙げた後藤丈治(P’s LAB札幌)。パンクラス札幌大会を主戦場に活躍する、MMAファイター・後藤丈治とはどのような選手なのか?大方の予想を裏切った出口戦をインタビューで振り返る。

P'sLOB:後藤丈治

先日はお疲れ様でした。ショッキングでしたね、あの試合は。あそこまで簡単に行くと思っていなかったですから。

ありがとうございます。

終わってみて周りの反応はどうです?

「出口君強いよ、大丈夫?」と言ってた人たちが「スゴイね」と、言ってることがひっくり返って。勝ったらこんなに評価が変わるんだなって、すごく嬉しかったですね。

「頑張れ、勝てるよ」とは言いながら、周りの予想は当然、後藤選手が不利なんじゃないかと言われていました。

友達はみんな「後藤君、大丈夫?」みたいな感じでしたね。勝てるよって言ってくれた人はほとんどいなかったので(笑)。一緒に練習してた小掘師範はもちろん、ケンセイさん(山川賢誠)とか、及川トレーナー(884ボクシングジム)とかは「絶対勝てる」って言ってくれてて。

2ラウンドで倒すつもりだった

後藤選手が先に入場して、後から入場してきた出口選手をずっと睨んでましたよね。「今に見てろよ」みたいな感じだった?

そういう気持ちでしたね。

お恥ずかしいのですが、僕も後藤選手が負けると予想してました(笑)。でも、1ラウンド始まってすぐに左ストレートが入って、出口選手が大きくよろけましたよね。あの時に「おっ、これはもしかすると・・・」と思ったんですよ。

実際に対峙するまでわからない部分はあったんです。でも実際にやってみて、1ラウンド目で「あ、こういう感じか」みたいなのは掴めたんですよ。小堀師範から言われていた感じとドンピシャだったんで、あとは作戦通りいけば勝てるなと。

作戦というと、倒しに行かずにアウトボクシングでずっとやれと?

パンチのイメージ先行の後藤だが、左のミドルも強烈だった

いや、2ラウンドの時点で狙えるとこは狙って倒す予定だったんです。もちろん、出口さんはすごいブルファイターっていうか、ガツガツくる感じなので、正面から五分五分で打ち合うのは避けましたけど。

あとは狙って打って、効いたところを一気にいければいいなって思ってたんです。でも、出口さんもタフだし、アゴ先に当てさせてくれないっていうか、倒れてはくれませんでしたね。倒しきれなかったというのは大きな反省点です。

ほぼ完封したように見えましたが、やりにくいと感じるところはあったんですか?

フィジカルの強さでガツガツ来られた経験がなかったので、やりずらさはちょっと感じました。技術の出し合いという戦いではなかったと思います。

前半はミドルと前蹴りで、ほとんど入れさせてはいなかったと思います。

そうですね。セコンドのボーさんからは入れさせるなって言われてたので。後半は蹴りが足りないってインターバルで言われて。「もっと蹴ろ!」って厳しく言われましたね。やっぱ、もうちょっと蹴ったほうが良かったかなって思ってます。

毎日、勝つことだけを考えていた

試合後に「何ラウンドの時点で”いける”と思った?」という質問をしたら、後藤選手は質問の意味がわからないといった顔をしましたよね。あれは試合前から”勝つ段取り”が、かなり具体的に出来上がってたからでしょう?

そうですね。映像を何回も見て研究しながら、やる前から勝つつもりで練習してきたんで。出口さんのことばかり考えてる毎日でしたよ。

今回の一番の勝因を挙げるとすれば?

小堀師範からのアドバイスが大きかったですね。試合が決まった瞬間から「こう攻めてくるから、お前はこうやって攻めろ」という明確な指示があって、イメージを作れたので。試合が近づくにつれて、”当たり前に勝てる”みたいな感じになってきたので不安はなかったです。

セコンドには884ボクシングジムの林会長もついてましたね。林会長とは以前からお付き合いがあるんですか?

自分の弟が884ボクシングジムでお世話になっていたことが縁で、声をかけていただいたのが始まりです。自分が高校二年生とか三年生くらいの時なので、3年前くらいですね。「練習こないか?」と声をかけていただいて、自分も林ジムで練習するようになりました。パンチの技術は884ボクシングジムで磨いています。

林会長もBOUTには毎回観戦に来られてますから、出口さんのクセをよくご存知だったんですよ。ジムでお会いしたときに、「出口君はこういうタイプだから、○○○○当てて、○○○○返して当ててけ」とアドバイスをいただきました。

前列中央が林会長、後列右から二人目が及川トレーナー

今回の勝利で、打撃のセンスにも高い評価をもらいましたね。しかし、後藤選手としては従来どおりMMAのファイターとして活躍したいというスタンスですか?

はい、そうです。

これまでの格闘技経験を聞かせてください

小学校の時に空手、中学生の時にボクシング、高校生の時に柔道を学びました。柔道にはそんなに興味なかったんですけど、一年生のときに強そうに見えない柔道経験者に思い切り投げられたんです。それにちょっと腹が立って、柔道にのめり込みましたね。

そんななかで、久しぶりにサンドバック殴りたいと思って中央体育館行ったら、打撃も寝技もやってる人たちがいて。それがMMAとの出会いです。これは面白そうだと思って、志願して仲間に入れてもらったんです。

その後、いろんなつながりで「キングス」っていうチームに入って練習するようになって本格的にMMAをはじめました。

P’s LAB札幌に移籍したのはどういう流れで?

パンクラス札幌大会の前に行われる「北海道ケージファイト」に出場したときに、小堀師範の目にとまって「本気でプロを目指したいならどうだ?」と、声をかけていただいて。自分もプロ目指してやりたいという気持ちが強かったので、すぐに決断しました。

強豪ジムへの出稽古で貪欲に学ぶ

いま、練習体系はどうなっていますか。

P’s LAB札幌での練習は週に一回です。自分の練習プラス、会員さんと一緒に練習ですね。他の曜日は士道館札幌道場で、ケンセイさんと打撃のスパーリングをしたり、884ボクシングジムでパンチを見てもらったり・・・。

そういいえば、WSR札幌にも出稽古に行ってるんですよね。

WSR札幌にはブラジリアン柔術のコースもあるんですよ。パラエストラ札幌の江崎 壽さんという強豪選手が指導されてるので勉強になってます。

WSR札幌は、毎週土曜日のグラップリングのコースも盛んですよね。あまり知られてませんけど強豪揃いですよ。

グラップリング・コースにお邪魔したことはまだないですね。ぜひ勉強させていただきたいです。

後藤選手が目指している選手像をお聞きしたいですね

カナダのジョルジュ・サンピエールはずっと前から好きで尊敬しています。

あ、そっか。そういえば、カナダに武者修行に行ってきたんですよね?

そうです。トライスター・ジムにいって、ジョルジュ本人に会ってきたんですよ。いろいろ話そうと思ったんですけど、緊張しすぎて全然話せなくて(笑)。一ヶ月くらいいたんですけど、最後のほうでやっと「Hi」って言えるようになって。

元UFC世界ウェルター級王者・ジョルジュ・サンピエールと

どうでしたか、向こうでの練習は?

今まで画面で見てきた人たちが、普通に「スパーリングやろう」って言ってくるので、怖い気持ちとスゴイ経験してるなぁ、という気持ちが入り混じってましたね。

トップレベルのジムといっても、特に変わった練習はなくて、基礎をみっちりやるでしょう?

そうですね、自分も意外だったんですけど、グラップリングにしても反復練習をしっかりやるんですよね。ひっくり返して形の見直しとか。外国人って、がさつなイメージがあったんですけど、技術が徹底してて意外でした。

練習方法として、これは役に立ったというのはありました?これは日本に持って帰ろうみたいなの。

やっぱりスパーリングのやり方ですね。安全面をすごく重視していて、肘・膝・脛のサポーター・ヘッドギアはもちろん、グローブも16オンスでスパーリングなんです。一回ダウンとかしたら1~2週間はやらせてくれないみたいな感じでしたね。

スパーリングの日が火曜と金曜なんですけど、金曜日だと、もうスパーリングだけみたいな感じ。前日とかその日の朝とかに、今日1ラウンド目だれだれとやる、2ラウンド目だれだれとやるって決めておいて、5分5ラウンドみっちりなんですよ。

対戦相手を事前に決めておくわけですか?

そうです。知らされるか、自分で決めていくかですね。自分から「今日、2ラウンド目お願いね」って言われたり言ったりして。同じ人とやるってことがないですよね。人がいっぱいいるからっていうのもあるんでしょうけど。

最先端ジムは安全最優先

何人くらいいるんですか?

プロのスパーリングのクラスだと普通に、30~40人はいたと思います。

事前に相手を決めておいて、スパーリングになったらすぐに始められる、みたいな。

そうですね。

日本みたいにいっぱい人数いても、スパーリング始める時にその場で相手を見つけて、みたいのはないんですね?

そうですね。たぶん、インターバル1分とかなので、そこでゴタゴタしてスパーリングができなくなったりするのを防ぐためなんじゃないかなと思ってるんですけど。僕はサウスポーなので、次のUFCの相手がサウスポーだっていう選手から、よく声がかかりましたよ。

逆に断られることもあるんですか?お前とやってる暇ない、みたいなのが。

そうですね。お願いしたら「いや、次の相手はオーソドックスだから、ごめん」って言われたり。「ちっちゃいからダメだ」とか。逆にジョルジュとかは、軽くて速い選手とやりたいというのがあったみたいで、軽い階級ばかり選ばれてましたね。自分もライト・スパーですけど、ジョルジュと手合わせできましたから。

基本的にライトスパーが多いわけでしょう?限定スパーとか。

そうですね。でも火曜と金曜はガチスパーです。スケジュールが全部決まってるんで、コーチが全部指示してって感じです。限定スパーとかは、クラス以外のフリーマットの時間にやってました。

カナダ極貧武者修行

有名ジムですから、一般会員さんとの区分けも厳しかったですか?

一般会員さんのなかにもUFCファンがいるんで、そういう人たちが写真撮りたいとか言いだすんですよ。コーチが結構厳しかったので、「お前ら遊びに来てんのか」って感じで写真は撮らせないみたいのは結構ありました。

自分もジョルジュと写真撮りたかったんで、コーチのいない時にお願いして、こっそり撮ってもらいましたから(笑)。

向こうで一番苦労したことはなんですか?

やっぱり食事ですかね。自炊なんですが、自分でつくるゴハンが全然おいしくなかったんです。ずっとカレー食べてました。自分で作ったやつを(笑)。

向こうではアパートを借りてたんですか?

ジムに併設している「ドーム」って呼ばれてる宿泊所があって、そこで相部屋してました。相部屋はプロの人とアマチュアの人がいろいろ混ざってて、メンバーもその日によってコロコロ変わる感じでしたね。ほかのジムから来たり、いなくなったりで、移り変わりの激しいところでしたよ。

じゃあ、メンバーと仲良くなる機会もなかった?

ずっと滞在してる人たちもいて、彼らとは仲がよかったですね。一緒に買い物に行ったり、映画観たりしてました。

トライスター・ジムの愉快な面々と

カナダのキャバクラは、非常に楽しいところだと聞いています。

行かなかったですね、そういったところには。

一ヶ月もいて、行かなかったと。

行かないです行かないです。なんせお金がなかったので、それどころじゃなかったんですよ。かからないはずの費用がかかったりして。

予想外の出費ってやつですね。例えば?

ドームの家賃とか。無料で宿泊できるって聞いてたんですが、普通に金がかかったんですよ。最初は向こうで遊べるかなって期待してたんですけど、普通に金なくて(笑)。

家賃はデカいですね。じゃ、ストイックな合宿生活だったわけだ・・・。

そうですよ、だから自炊とかして頑張ってたんですから。でも、部屋に女を連れこむ奴はいましたよ。全然ストイックじゃない奴が(笑)。

面白いじゃないですか、それでどうなったんです?

いや、みんな普通に壁に耳つけて聞いてましたね。「おまえら、ホントにUFCで戦ってる選手なのか」って思っちゃいました(笑)

ウケますね(笑)。そんな武者修行を経ての5月14日・パンクラス札幌大会ですが、相手はベラトレオ函館の竹内選手です。前回の飯島戦では不完全燃焼だっただけに、今回はスカッと勝ちたいところです。抱負をひと言お願いできますか。

いま言っても、「えーっ?」て言われるのは分かってるんですけど、自分には大きな目標があります。今はまだ全然ですけど、いつかはみんなが知ってるような大きい舞台で、世界を相手に戦えるようになりたいんです。

5月の試合はその通過点でしかない。前回の飯島戦は悔しさしか残らない試合でしたが、今回は対策も徹底しています。負けたらそれなりの責任を取るつもりで挑みますので、みなさん応援よろしくお願いします。

応援しています。本日はありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

後藤選手が出場予定の5.14パンクラス札幌大会の詳細はこちらから

【後藤丈治 プロフィール】1996年、札幌市出身。MMAチーム「キングス」でMMAのキャリアをスタートし、パンクラス主催のアマ大会「ケージファイト」で頭角を現す。2016年10月にプロ昇格。以降はパンクラスの札幌大会を主戦場に活躍中。打撃にも非凡な才能を発揮し、2017年の「BOUT-26」では”道内フェザー級最強”の称号をもつ出口智也を下している。北海道大学経済学部に籍をおく異色のMMAファイターとして注目を集めている。

後藤丈治選手がインストラクターを務める、パンクラスオフィシャル“ハイブリッドスポーツジム” P’s LAB札幌の詳細はこちら

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山田 タカユキ

山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。愛読書はさいとうたかおの「鬼平犯科帳」。
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