蘇る北濱精悦。 | TARGET SHIBUYA・北濱精悦さん

あの男が7年の時を経てBOUTのリングに帰ってくる。他流派勢としては初めて極真連合会の世界大会を制するなど、輝かしい戦績を誇った空手家・北濱精悦が、キックボクサー・北濱精悦として生まれ変わりBOUTのリングに襲来する。現在は東京のTARGET・渋谷ジムで調整をおこなう北濱に近況を聞いた。

空手のほうで世界チャンピオンになって、それから一度、引退されましたよね。

そうですね、はい。

格闘技の世界に戻ってきたのが、今のキックボクシングの世界だったと。空手に戻るんじゃなくて、キックのほうにきたっていうのは、なにか理由があったわけですか?

K-1を小さいころに見てて、キックボクシングってカッコいいなって思ってました。魔裟斗選手に憧れていた部分もありますし。

で、先輩の紹介で空手にまず出会ったんですけども、やっぱり空手やってるときも、キックボクシングをやってみたいなっていう気持ちは常にあったんですよ。

空手をやってるときから考えとしてはあったんですね

はい。でもやっぱり周りの方々に(師範とかに)お世話になってるし、空手でもできるところまでやってみたいという思いもありましたので、まずは空手に全力で打ち込もうと。

世界大会を制したあと、東京に出たのはキック修行のため?

いえ。俳優・役者に挑戦したいというのがありまして、そういった勉強をしたいなと思いまして東京に。

そうでしたか、俳優さんのお勉強で・・・

で、こっちへ来ると、いろいろキックボクシングのジムとかもありますし、この機会だからやってみようと思ったのがきっかけですね。

現在はTARGET・渋谷ジムの所属ですね

「テラスハウス」っていうTV番組を好きで見ていたんですよ。その時にジム会長の宮城大樹さんが出演されてまして。

ちょうど東京にきて一年くらいのときに、大樹会長がTARGET渋谷を始めたっていうことを聞いて、すぐに入門を決めました。

誰の紹介もなしに、いきなり入門されたんですか?

そうですね。

写真:アマ大会で表彰を受ける北濱。画像は本人提供

すぐに経歴がバレたでしょう?「君、どっかで経験あるでしょ?」みたいなことで(笑)

まぁ、そうですね(笑)

空手からキックボクシングに転向されて、ここ苦労したなっていうところは?

やっぱりこう、顔面のパンチがあることによって距離の取り方だったり、あとは攻撃の仕方だったり防御の仕方もすごいパターンが多くなるので、空手とはまた違った難しさや楽しさがありますね。

特に距離感だったり、防御特に顔面殴られることに慣れてないので、そのあたりがなかなか難しいところですね。

今、アマチュア大会のカミナリモンに出られてますよね。カミナリモンで何戦ぐらいしたんですか?

4回闘いましたね。トーナメントも合わせて。

アマで4戦して、「じゃあちょっとプロでやってみろ」と。流石ですね。

個人的には「どうかな」と思ったんですけども、せっかくいただいた機会だったんで、それに向けて全力でやってるところです。

試合のときはどなたがセコンドに?

大樹会長がついてくださって、いろいろと指示をいただきました。

大樹会長はファイタータイプでしたから、やっぱり「打ち合え」っていう指示が多いですか?

打ち合って熱くなるだけじゃなく、冷静に闘って技術でしっかり戦うっていう部分を強くアドバイスしてくださいます。

自分は空手時代からそうなんですけど、熱くなっちゃうタイプなんで、やられるとガーっといっちゃうタイプなんですね。

でも、キックボクシングだと顔面のパンチ一撃でやられちゃうことがあるので、感情だけでワーっといくのは3月までには修正しないと。

写真:空手時代の得意技・飛びヒザ。対戦相手を震え上がらせた

ぶっちゃけ、キックに転向してダウンしたことってあります?

ありますよ。

おぉ、キックの洗礼を受けてるわけですね(笑)。それは試合で?

アマチュア・トーナメントの決勝戦で。延長戦まで行ったんですけど、後半、「ポイントで優勢に」っていう気持ちがあってバーッと攻めたときに、カウンターで一発もらいまして。久々にこう、気を失うっていうのを味わいましたね(笑)。

でもまぁ、練習でもうまくいかないことはあるし、スランプもある。空手時代でもそういうのはあったし、これをしっかり乗り越えていきたいと思っていいます。

そういうときの孤独感とはどう向き合っていますか?

そうですね、一緒にアマチュアの試合に出て、頑張ってる方が何人かいるんですが、その方たちと一緒にアドバイスしあいながら励ましあいながらやってます。

自分は自分の欠点ばかり見ちゃうんですけど、そういう仲間の方が自分のできてるところとか、よかったところを練習の後に言ってくれるんで、すごい励まされてますね。

キックボクシングに転向後、自分なりに育てて得意技としてる技ってあります?

正直、試行錯誤してる段階で、これといってしっくりくる技はないんです。でも膝蹴りがやっぱり得意なので、そこの部分を活かしていきたいなと。

空手時代は、ものすごいキレイな胴回し回転蹴りとかを繰り出してました。ああいうのがキックだとなかなか使いづらいじゃないですか?

そうですね、キックの試合だとあんまりメリットがないというか(笑)。

空手の試合だと顔面パンチが禁止なので蹴りしかないというか、蹴りが顔に決まると一撃必殺で倒せるという感じなんですけれども、キックボクシングになると普通に顔面をパンチで狙えちゃうので、大技で上段狙うメリットがあんまりないですよね。

なるほど。

でもタイミングを窺って使いたいなとは思ってるんです。そうなるまでには、しっかりキックボクシングのスタイルで相手と闘えるようになるのが必要です。今はそこを重点的に、基本から教えていただいてるところです。

写真:テクニシャンだった北濱。軸足に後ろ回し蹴りを合わせる。

北海道のファンで僕らの年代の人間だと、K-1を見て育ってるじゃないですか。

ええ、そうですね。

例えば、アンディ・フグってキックに転向しても空手の技をよく出したじゃないですか。バックスピンキックとか後ろ回しも。

ガッチガチのムエタイスタイルっていうのも素晴らしいですが、アンディみたいな華のある動きが欲しいなっていうのが僕らの年代のファンには多いんですよね。

なるほど、わかります。

北濱さんだったら、もしかしてそういうのをやってくれるんじゃないかっていう期待が潜在的にあるんですね、北海道のファンには。

あー、本当ですか。プレッシャーですね(笑)

TARGETっていったらガチガチのキックのジムでしょう?空手道場から派生したジムじゃなくて。

そうですね。

だから北濱さんは使いたくても、空手の技なんか使うなっていう暗黙のプレッシャーがあるのかもしれない(笑)。だから、きっと北濱さんは空手技を使うことはないだろうって仲間内では話してるんです。

あっはは。じつは空手時代、大技を出して当たらなくても、周りの人たちが喜んでくれたり、盛り上がったりするのを見るのは好きだったんですよ(笑)。

じゃ、タイミングが合えばファンサービスってことで是非。セコンドに「なんであんなん出したんだ!」って怒られるかもしれませんが(笑)。

わかりました(笑)。期待してください。

写真:破壊力抜群の蹴りを放つ北濱。BOUTでも炸裂するか?

では、いよいよ迫りました3月の「BOUT-26」についてお聞きします。オファーがきたときの率直な感想は?

嬉しかったですね。やっぱりBOUTは憧れのイベントですから。ドキドキとワクワクが入り混じって、まぁ心配と不安もありますけど、目標に向かってしっかりとやりたいなと。

対戦相手の大地選手についての印象は?

自分は空手の世界にどっぷり浸かってたので、大地選手のお名前は知らなかったんです。身長が高くて、ほとんど1ラウンドで決着つけてっていう感じですか?あと、イケメンなのと(笑)。

北濱さん的にはトーナメントとワンマッチ、どっちがお好みですか?

自分的には、トーナメント戦で少しずつ身体動かしていくのに慣れてますね。ワンマッチのほうには慣れ切ってないっていう感じですかね。でも無傷でそのまま闘えるのは大きなメリットだと思います。

今回はキックのプロデビュー戦っていうことですけど、ゆくゆくの目標みたいなものはお持ちですか?

自分の夢としては映画に出たいっていうのがあります。まぁ無謀な挑戦なんですけれども。機会をなんとか作っていきたいなと思ってるんで、そのためにキックボクシングとかで実績作ったり、知名度を上げていきたいなと思ってます。

わかりました。では3月の26日決戦にむけて、札幌のファンに向けて一言お願いいたします。

私も北海道に行って皆さんの前で試合できるのが本当楽しみです。しっかりと練習していい動きができるように仕上げていきます。

当日はキックボクシングのスタイルだけじゃない、その中に融合させた空手の技を見てもらえたら嬉しいですね。

今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

とんでもありません。どうもありがとうございます。

【北濱精悦:プロフィール】1982年、北海道小樽市出身。幼少より野球・バレーボール等でスポーツ万能ぶりを発揮。21歳のときに白蓮会館小樽支部の門をたたき、格闘技人生をスタート。2008年、極真会館連合会の第2回世界大会で優勝した他、数々の大会で表彰台をさらっている。現在は俳優として経験を積むかたわら、プロ・キックボクサーとしても活躍。趣味は映画鑑賞&家族とのキャンプ。ガン(銃)マニアとしての一面も持つ。TARGET SHIBUYAジム所属。

ジム・道場データ

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山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。