札幌の隠れた名伯楽が語る。K-2グランプリ攻略への道 | 一信会館・佐藤信一さん

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第27回全日本新空手道選手権大会「K-2 GRAND PRIX 2016」において、秘蔵っ子・青木惇人を軽軽量級に送り込み、決勝戦まで駒を進める快進撃を演じさせた一信会館の佐藤信一館長。

惜しくも決勝で敗れはしたが、札幌勢としては異例ともいえる快挙を成し遂げた隠れた名伯楽に、これまでの道程と選手育成の秘訣を聞いた。

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:先生、見ましたよ、青木君の試合の映像を・・・。

佐藤:はい、決勝のですよね。ありがとうございます。

:決勝戦の相手、中島選手のお父さんが札幌にお住まいだって知ってました?

佐藤:お会いして聞きました。とてもいい方でしたね。今度すすきのに一緒に飲みに行こうみたいな話しを、青木さんにしてました。

:中島選手、やっぱり空手っぽいっていうか・・・。あんまり打ち合ってこなかったですよね。

佐藤:準決勝の相手とは、かなり打ち合ってたんですよ。それでこの感じだと、噛み合うねって話しをしていたんですよね。そしたらもう決勝になったら徹底的に守りにまわり、かなり間合いが遠いし。もうほとんど自分から前に出てこないっていう感じで・・・。

で、詰めるとリングじゃないんで場外になりますから、攻撃の流れがストップしてしまうような感じだったんですね・・。それにしても中島選手はうまかったですね。高校1年生だったんですけど。

:青木選手は、ちなみにおいくつでしたっけ?

佐藤:今・・たしか27のはずですね、はい。ちょうど始めて1年位なんですね。

:1年で・・・すごいですね。見てたらずっと前に出て、打ち合い上等みたいな感じだったじゃないですか。

佐藤:そうですね、肝が据わっているので打ち合いが好きみたいですね。

:準決勝で大物喰いしましたけれども、そのとき奪ったダウンもパンチで?

佐藤:そうです、パンチですね。彼は蹴りも強く、パンチも右も左も強いですけど、今回は右の方でダウンを奪いましたね。

:彼の強さの秘密はどこだと分析されてますか?

佐藤:やっぱり、まじめさですね。

:練習をまじめに?

佐藤:練習は全部来ますね、用事ない限りはほとんどです。
うちの道場今、週5回くらいやってるんですけど、本当に仕事で遅くならない限りは全て来ますね。

:ほう・・・彼は仕事って何やってるんですか?

佐藤:水道関係なんですよ。水道のトラブルとかですね。水周りの。

:じゃあ、結構大変なんですかね。あれ、24時間仕事の依頼が入るわけでしょう?。呼ばれたら行かないといけないみたいなイメージがありますけどね・・・。

佐藤:そうですね。

:ところで一信会館といえばですね、早くから本州の大会に挑戦し続けて結構成績もいいんですよね。その秘密はどこにあるのか、いろいろ興味のある方が多いもんですから、そのあたりをお話し頂ければと思うんです。

佐藤:北海道で優勝何度もしている選手達がいたんですが、結局、北海道の中だけだとモチベーションがあがりきらないっていう問題があったんです。だから、現役の強いうちに全国大会で活躍の場所を提供してあげたいなって思って。

それで、なんていうんでしょうね、団体に入ってなくても出させていただけるところをずっと探してて・・。で、電話して直接会長さんとかにですね、出させていただけませんかっていうことでお願いしたりしてたんですよ。

:会長さんっていうとどちらの?

佐藤:えーっと、最初は国際総合さんですね。花元会長ですね。花元先生・・。

:国際総合といったら何の大会を主催しているんでしたっけ?

佐藤:「チャレカラ」の全国版みたいなやつですね。グローブから公式からフルコンから・・・それが丁度いいなと思って・・・。

:じゃあそこからスタートして・・・。

佐藤:そうです。そこで出た選手が優勝したので、さらにもうひとつ上、新空手ですね。

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:その頃はもうK-2とかそういった呼び方をされていたんでしたっけ?

佐藤:そうです。チャンピオンベルトとかもあって。丁度、CSのgaoraを見てて、ここのベルトを取らないとな、とは思ってたんですよ。

それで最初に、藤木君が入門して一年くらいでk-1甲子園に出場したいと言ったので、K-1甲子園に出しました。ブロックの準決勝で負けてしまったのですが、もし決勝まで行ったいたら、k-1で活躍している木村ミノル選手と野入選手と試合をしていたんですよ。・・・(笑)。

そして、次に新空手のk-2に挑戦させました。相手はチームドラゴンの平塚大士選手(クラッシュで活躍している)です。

:ジュニアからやってる子?

佐藤:そうです、k-1甲子園にも出場していました。
その選手がちょうど下の階級で優勝して、2階級制覇を狙って、それで藤木の階級にあがってきたんです。

:ああ、大塚選手、はいはい。

佐藤:そのときは前半は良かったのですが、後半はボコボコにされて負けちゃったんですけどね。
北海道で強豪の選手(蹴空の工藤選手。須郷選手)とも試合をした事がありますが、こんなにやられて負けたの初めてです。藤木は最初はプロの選手になりたいって言ってたんで・・。

:プロの選手を目指していた?

佐藤:ええ、それでまず・・なんていうんでしょうね。プロって厳しいじゃないですか。

:はい。

佐藤:本当になりたいんだったら、プロの選手が通るいわゆる登竜門をくぐってもらうと。

その頃アマチュアで僕が見た感じでは、一番レベルが高いなって思ったのはK-2だったので、まず本人をそこに出してから、本人がそこで本当にプロとしてやるのか、で、プロになるんだったら、こういう選手たちとやらなきゃなんないんだっていうのを覚悟が必要だとおもったんです。

:その頃ですか、梅田将成選手なんかも出てきたのは?

佐藤:はい。彼も同じように最初国際総合で優勝して、で、その後に今度K-3、K-2で挑戦してから最初プロ志願だったんですね。

大学卒業したら東京に行くかもしれない話もあったので、もし東京行ったときに、梅田君を待遇のいい状態で、東京のキックジムや道場が受け入れてくれるようにするのにはどうしたらいいかなって考えていたんですよね。

:なるほど。

佐藤:札幌から東京へ出た知人に、東京のキックジムの現状を聞いたら、プロになりたいと夢をもっていっても、たいしたモノにならない選手だと、練習に行ってもミットも受けてもらえないとか・・。ただサンドバックだけ殴って帰るようなそんな状態だよって聞いてたんで・・・。

それじゃあ、どうしようかなって色々考えて、道場名を一信会館で出しても、絶対関東の人達は知らないなと思って、それで札幌をつけたんですね。

:札幌一信会館と。

佐藤:はい。そうすると選手が活躍したときに、札幌の梅田が強いっていう印象を持ってもらえます。そうすると「わざわざ札幌から来たんですか?」みたいな感じで話しかけてくれるようになったんですよ、周りが。それで梅田君は有名になって小比券巻道場からもスカウトが来たんですね。

:小比券巻道場からスカウトがきたと。

佐藤:ええ、トレーナーからですね。仕事も、住むところも、全部こっちで用意するから来てくれないかっていうことで。

:なるほど。小比券巻道場から来るっていうのは・・・すごいですよね。

佐藤:そうですね。梅田君は断ったんですけど(笑)

:ええ?それは何を理由に・・・?

佐藤:プロの実情っていうんでしょうかね、そんな甘くない現実があるなかで、揺れ動いた部分があるんじゃないでしょうか。

:わかります。

佐藤:今は大学を卒業して、埼玉に行ったんですけど、本人は気持ちがまた燃えてきて、プロにもなりたいなって感じではいるみたいです。
MMA禅さんの記事を見て燃えたみたいです。プロ向きだっていうコメントを見て。

:一信会館の選手って梅田君にしても青木選手にしても、結構打ち合うっていうか、ガンガン前に行くほうじゃないですか。そういうのって個人の資質なんですか?それとも佐藤先生の指導方針でそういう風にしているわけですか?

佐藤:そうですね・・・最初に道場が週1しかできなかった頃に、週1の練習でどうしたら選手が勝てるかなっていうことを考えてたんです。

で、アマチュアって2分とかの1ラウンド制なので、それに足サポつけて蹴って、ローとかミドルがどれだけ効くだろうかなっていうことを考えてたんですね。

で、新空手は今独特のスタイルがあって、蹴り主体、フットワークが早くて、蹴り主体でしっかり間合いを取って戦うんですね。ものすごくプロのような戦い方っていうんでしょうかね。すごい上手いんですね、技術的に。

:蹴りを主体に・・?

佐藤:そうですね、蹴りも物凄い早いし、もう、ギリッギリでかわして蹴り返したり・・。おそらく同じ戦い方をすれば絶対勝てない。一信会館の持ち味を出してパンチ技術を上げていけば攻略のできる部分はあるなと。

そこから新空手のトップ選手を切り崩して行こうかなと考えて、徹底的にパンチの技術を中心にやったんです。それで、いまこういう形でパンチ主体の選手が多い感じになってきたんですね。

:なるほど、よくわかります。

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佐藤:魔裟斗選手も言ってたんですけど、「世界」に目をむけたときに、やっぱりパンチ技術がないと通用しないんだと思って。

もしプロになったときに、やっぱりボクサー並みにっていうんでしょうかね、あれ位のパンチ技術がないと、特にヨーロッパの選手には勝てないんじゃないかなっていうのは思ってたもんですから、それだったら世界レベルを考えてやったらいいんじゃないかとは思ってたんですね(笑)

一信会館は勉強熱心な指導員が何人もいる中でも特に梅田さん(一信会館のキック・ボクシングトレーナー)とかにもボクシング技術と教えてもらったり、アマチュアボクシングでずっとやってた小笠原さん(一信会館師範)なんかに積極的に教えて頂いて・・・で、パンチのほうが、皆光ってる感じですね。

:じゃあ、パンチの技術は、梅田さんだったり小笠原さんだったりの指導が大きいわけですか?

佐藤:大きいですね、はい。

:そういえばBOUTで活躍している山川賢誠選手も、最初梅田さんが教えてたんですもんね。

佐藤:そうですね。下積み時代に梅田さんに教わった選手は、他のフィールドに移っても好成績を残してますよ。

:実際、新空手に参戦し始めて、向こうのジムの人たちの反応ってどうですか?その、最初は北海道の札幌から来たところで、その・・あんまりたいしたことないだろう、みたいな感じで見られてたわけですかね?

佐藤:そうですね。それでも久保坂左近先生は毎回笑顔で「遠い所からわざわざ来て頂いてありがとうございます」と声をかけてくださいます。とてもいい先生です。

他にも有名な先生達がたくさんいますが、札幌の一信会館なんて知るよちもないですよね。これが現実で、北海道のキックレベルの低さだと感じました。

:好奇の目でみてくると?(笑)

佐藤:この頭の光っている男は誰だ?みたいな感じ(笑)みたことねえやつだな、みたいな感じですかね(笑)

選手達が活躍するようになってからですね、声をかけていただけるようになったのは。「遠くから来たんだね~」「これから飛行機乗って帰られるんですか?」みたいな感じで(笑)

:全国大会ですから、一流のジムの人たちが集まってますよね。そういうところで何かこう、こういう技術を盗んで帰ってくるっていうのはあります?

佐藤:結構、毎回それを楽しみに行っているんですけど、特にチームドラゴンが、どういうアップをやってるのかを、まず盗もうとは思ってたんですね。

それでチームドラゴンの選手はどこにいるかとか、いつもどこで集まっているかを見て、こそっと近くに行って見てましたね。テーピングの巻き方とかですね、あと前田憲作会長はどういうアドバイスをするかとか。

:みんなに聞こえるようにアドバイスをするんですか?前田さんて。なんかコソコソって話しません?

佐藤:そうです、静か~に話しますね。応援するときは逆にセコンドの声大きいんですよ。すっごいみんな大きな声で。選手へのアドバイスはすごい小さい声で耳元でしてますね。何よりは負けた選手に罵声を浴びせたりは絶対しなですね。

:アップはどんな感じで?

佐藤:自分が見ていたときはシャドーなんですね。

:全部シャドーでアップを?

佐藤:してましたね。イメージ作って、それで長い間ずっとシャドーやって、汗かいてっていうのをやってましたね。

:時間にしてどのくらいなんですか?その、シャドーだけで。

佐藤:そうですね・・・かなりですね。何ラウンドもやってますね。そして試合が近くなるともう試合さながらのシャドーをやってますね。

:じゃあ、人に対して何かするということは無いわけですね。

佐藤:そうですね。それでとりあえずウチも真似してみようって事でみんなに言って(笑)で、まあ、選手によってはやっぱりミットを、試合やる前に蹴りたいっていう選手もいるんですけど、とりあえず真似してみようかって。

なかなか真似は出来ないんですけど、みんな、黙々と・・チームドラゴンのようにはまだ出来ないですけど。

あと意識して観察するのは、使ってるミットとかも見てきて、一応どういうミットを使ってるかとかですね。

:変わったミットを使ってるとかあるんですか?

佐藤:かわったものはそんなにないんですけど、何ていうんでしょう、札幌にいますと通信販売で取り寄せるのが多いので、写真だけですと結構わからない部分が多くて、現地行って、やわらかさとかですね、見た感じの硬さとか持ち方とか、そういうのも一応、見てくるようにはしてます。

で、小比券巻館長がいるときも、こそっと後ろ行ってアドバイスとか聞いてます。どういう風に選手にアドバイスするのかを(笑)

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:そういった研究もあって今現在、強い選手がいっぱいいる訳ですけれども、ずばり一言でいれば、佐藤館長の指導方針としては、ここに一番重点を置くという所はどこですかね?いろいろあるでしょうけれども、ここが一番最重要だというのは?

佐藤:そうですね、みんなで誉めあってみんなで楽しくやっているところですね。とくに選手に対しては型にはめないようにはしてますね。大物程型にはまらないっていうんでしょうかね(笑)

で、出稽古も自由にさせるんですね。もう好きなとこ行って、出稽古もやっていいと。キックボクシングに限らず、総合の選手の方達にもお願いしてスパーリングをしてもらっています。

技術盗まれるとかそういうことは全然考えないで、沢山交流を持ってもらう。やっぱり関東、関西の選手に勝つには、道内全体で交流を持って技術をレベルアップしないとやっぱりかなわないなとは思ったんですね。

:今後の目標としては、どんなことを考えているんですか?

佐藤:とりあえず、青木さんはK-1のアマチュア全日本大会に出場し。それで優勝を狙っていこうって思ってます。あとチャンスがあったら、関西の方に乗り込もうかって話をしてるんですね。名古屋の大会とか大阪の大会に行って、場数を踏んで強くなろうかっていう話しをしてます。

:なるほど、東京飛び越えて大阪まで行っちゃうと。それは向こうの関係者からお誘いがあったんですか?

佐藤:いえ、ないです。こっちからK-2準優勝っていう実績を持っていって、それで出させてもらおうかなとは思っているんですけど。

:新空手の全日本準優勝ですから、どこ行っても恥ずかしくないですからね。関西の新空手大会を狙うんですか?

佐藤:いえ、新空手の大会を含めて、今インターネットで調べてみてるんですけど、出られそうな大会を見て出させてもらおうかなとは思っています。
あと高校一年生でひとり有望株がいるんですよ。K-1甲子園に出たくて、ウチの道場に辿り着いて来た子なんです。その子が凄い急成長してますんで期待してください。

:もしかしてカミナリモンに出てた子ですか?あの子良かったですよね。全然物怖じしてなかったし・・。

佐藤:そうですね、初めての試合にしては良かったと思うので。彼もK-1甲子園に出たいって言うので、今鍛え上げて、今年の7月のK-1甲子園には出場する予定なんです。

:じゃあ、ゆくゆくは、K-1のアマチュアからプロにという方向もあるわけですね。青木選手ってプロ志望なんですか?

佐藤:そこまでは話していないんですけど、今はK-1のアマチュアで勝っていこうかっていう話はしています。K-1のAクラスに出場する時、申込用紙にプロになるかならないかの希望を書く欄があるんですよね。

:申込用紙に?

佐藤:はい、はい、それで、プロもOKみたいに書いて出しているんですけど。青木さんとは、アマチュアでは敵なしっていう位強くなんないとね、って話しています。

:最後に、直近で参戦予定の大会はありましたら教えてください。

佐藤:青木さんは6月のカミナリモン札幌大会に出るって言ってましたね。過去に一試合しかやってないんでBクラスでしか出れないとは思うんですけど。
後、K-2で二階級優勝した勝本選手ともいい試合をした若者も、カミナリモンに出場する予定なので楽しみにして下さい。

:当サイトでも6月のカミナリモン札幌大会は取り上げますので、楽しみにしています。本日はありがとうございました。

佐藤:こちらこそ、ありがとうございました。

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写真提供:一信会館
photo & text:山田タカユキ

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山田 タカユキ

山田 タカユキ

1971年生まれ。おもに格闘技イベント「BOUT」に関するレビュー記事や、出場選手へのインタビュー記事を担当。競技経験は空手・キックボクシング、ブラジリアン柔術。愛読書はさいとうたかおの「鬼平犯科帳」。
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